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――数時間前


「――…と言う事なのですが、お願いできますか?」
温和しそうな低い声が"その部屋"に響く
部屋といってもまるで会社などで使う応接室のような場所であった
飾りもなく、質素な部屋で緊張感さえ感じさせられる様な部屋だった。
その部屋には現在先程説明した温和しそうな低い声の男と他に黒く短い髪を持つ男がテーブルを挟むように向かい合い、それぞれソファに腰を掛けている
「ふむ、」と言いながら黒い髪をした男は黒い髪を揺らしながら自分の座っているソファの背もたれに上半身の体重を掛けた
男の瞳は少しくすんだ紫をしていて,何処か影が掛かって居る
その様子は妖しく、何か魅了されるものを秘めているようだった。
肌は雪のように白く、本当に男なのかと疑いを持ってしまうほど美しい。
そして紫の瞳を何者かから守るように黒縁の眼鏡をかけている
何よりも目を惹かれるのは男の首に掛かった紫色の蝶が付いているチョーカーだ
チョーカーは首輪のような形をしていて、丁度正面にあたる位置から紫色の蝶がぶら下がっている
紫の蝶は男の露出された鎖骨に丁度あたっており、それもまた彼を妖艶に見せているのだろう
――――男の名は"紅華"と言う

そして紅華は暫く考えた末に温和しそうな低い声を持つ依頼人に「その依頼、お引き受けしましょう」と答えた
その答えを出してから紅華はすぐに大きな声で「唯人君」と一人の男の名前を呼んだ
呼ばれた青年は「何でしょうか?紅華先生」と問いかけるように部屋の中に入室してきた
紅華は「おいでおいで」とでも言うように手招きをする
唯人と呼ばれた青年はそれに従って紅華に近寄ると二人で依頼人には聞こえないような小さな声で会話をし始めた
そして暫くすると唯人は紅華から離れるように一歩後ろに下がってから「承りました」と言った。
そして退出するために、自分の入ってきたドアに向かい、ドアを開ける前に依頼人に向かって「失礼しました」と一礼して部屋を出た



「報酬は―――どれくらいですか?」








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