救いか罰か



楽しげに話す二人の背中を見て不思議と笑みが零れた。
"アレ"を知らないのであれあの二人が幸せなのは嬉しいことだ。
あの二人の幸せがいつの間にか俺の幸せになっていたのだ。
どす黒い感情に飲み込まれたときだって数少ない訳じゃない。ソレはどちらに向けてだったのか、今の俺にもあの頃の俺にも分からないけれど。
「――熱心に見ているな」
そう声を掛けられて振り向けば記憶に存在する一つの姿。
自分より身長高いくせに年下であるその人は相も変わらず大人びた笑みを浮かべてそこに存在していた。
俺にとって大切な二人だから。そう答えれば彼はただ一言そうかとだけ言って話はそこで終わった。
「ひびきー!」
ダイチの大きな声で呼ばれて振り返れば二人はこちらを見て手を振っていた。
早くこいという意味なのだろう。今行く、そう答えてからヤマトさんを見る。
――ではこれで。そう言って立ち去ろうとした途端に手を掴まれた
そして振り返った途端に唇に何か一瞬だけ触れた。
驚きに目を見開いていれば「何かあれば俺の元に来ると良い」とだけ言って彼は立ち去った。
何だったんだと思いながら微かに残る彼の匂いが甘美な誘いに思えて無理矢理振り払うように立ち去るようにその場を後にした。
俺を見て微笑む二人が救いに見えた。


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呟きにて呉葉さんに捧げた物




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