盲目の正義

※Zektbach様のBlind Justiceより

――刮目してみた暴君の顔は、盗賊の顔は確かに自分そのものであった。

このモモヤマという国は王制で成り立っていた
ここ数年前に王は変わり、前王の息子がその後の王を引き継いだ。
それが原因なのかは知らないが、きちんと成り立っていたこの国は良くない方向へと進んでいった。
民は飢え、王族関係のモノは民を虐げ始め、商人は高値を押し付け始めた。
王がまだ14も満たない少年だったというのもあるだろう。
それでもこの国は本当に良くない方向に一直線に進んでいった。
その為、14も満たない少年王は国民から"緑の暴君"と称されていた。

――その王制を革命する為に一つの義勇軍が立ち上がった。
元は騎士だった者が集まって出来た革命軍だ。
その筆頭を指揮するのが暴君と呼ばれる少年王と同じ14も満たない少年だった。
血の様な紅い眼はしっかりと城を睨み付けており、茶色い髪はその意志を表すかの様に逆立っていた。
彼はトパーズの宝石が嵌っているさも宝具と言えような剣を掲げると声を張り上げた。
―――――今こそ彼の暴君を討ち取ろうぞ、と。

――また、義勇軍が立ち上がったその時、貧民には正義の味方とも呼べる存在があった。
王宮や王族関係者の家に不法侵入をし、金になる物を盗んでは貧しい者達にそれを渡すという―――つまりは義賊だ。
その頭領として存在する少年もまた少年王や義勇軍の筆頭の少年と同じ14も満たない少年であった。
まるでガーネットの様な紅い瞳は強い意志で貧しい者達を見詰め、その茶色い髪はあまり自分の事を気にしていないとでも言う様に無造作に揃えられていた。
彼は木の上から高らかに叫ぶ義勇軍を見ながら綺麗事を言いやがってと唾を吐きその場を立ち去った。
彼の腰にもまたルビーの宝石が嵌っているさも宝具と言えような剣がぶら下がっていた。

薄々勘づいた者もいるだろう。だがこれは知られていない真実だ。
なぜなら三人の顔を全て見た者は世の中に存在しないし、本人達もその真実を知らないのだ。
知っているのは彼らの傍にそれぞれ存在する特に特徴も持ち合わせていない少年達だ
一人は少年王の元にいる側近の将、一人は義勇軍の医療師、一人は義賊の副頭領。
彼らは影で繋がっており、親友なのだ。
その為情報交換をしている為に彼らの真実を知ってしまった。
そして彼らはその三人を合わせようと力を合わせた。
そうすればこの状況が改善されるのではないか、と。
だが、それを良しとしない人間がいた。
それは緑の暴君の背後にいる大臣だ。
彼は少年王が城下を見ていない事を良いことにして城下についての報告は嘘を通し、自分勝手に政治を動かしていた。
その大臣は三人の考えに気がつくと傭兵を雇って三人を暗殺した。
そして、少年王に義勇軍が側近の将を殺したと告げた。
私が着いたときにはもう手遅れだったと。死人に口なしを有効に利用したのだ。
彼を信用しており、側近の将を大層愛していた少年王はそれを訊くと兵を挙げ、義勇軍を潰しに掛かったのだ。
だが、義勇軍の筆頭も親友であった治癒者を殺されている為そのまま王の軍に対抗した。
また、義賊の頭領もその争いに便乗したのだ。



「――――お互いそれぞれ自分が信じる正義のみを見詰め、自分と相対する正義を壊す為に敵同士と成った三つ子は国を巻き込んでその血を争ったんだ。」
そう言うと褐色の肌をした神父は立ち上がった。
「お話はこれまで。レイカ、アオト、お祈りの時間だよ」
そう微笑みかければ話を聞いていた金色の少年と黒髪の少女は一つ返事をして立ち上がった。
「ねぇ、タギ君。結局その人達はどうなったの?」
少女がそう問いかけると褐色の神父は困った笑みを浮かべて答えた
「結局彼らはツバサという少年とエリカという少女に殺されてしまったんだよ。」
「――じゃあわかり合えないまま死んじゃったの?」
そう金色の少年が問いかければ神父は寂しそうに首を縦に振った
それを見届けると少女と少年は顔を見合わせてそれぞれ言った
「じゃあ…次生まれたら仲良く暮らせると良いね」
「うん。殺されちゃった三人も一緒にね。」
そして三人は彼らを想い神に祈った。



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