緊急事態、双子の兄が家出しました。

部活を終えてクタクタになりながら家に帰宅した。
このあと家で双子の面倒を見なきゃ行けないのかと思えば自然に溜息が出た。
ただいまと言って玄関の扉を開けるのと同時に自分の横を何かが全力疾走で横切った。
何事だと振り返れば双子の一人、虎太の方が走り去っていく背中が見えた。
「待ってください虎太く」
そこまで聞こえたのと誰かが転んで倒れる音が家の中から聞こえたのが同時だった。
今度はなんだと家の中を見てみれば玄関の靴を置いてあるところの石に口づけを交わしながら下半身はフローリングにあるという変な姿の双子の片方である竜持がいた。
すげぇ無様な格好に笑いを堪えながら大丈夫かとしゃがみ込んで問いかけてみれば手を石に付けてゆっくりと上半身を浮かして竜持は俺の方を見た。
凄く泣きそうな顔を隠す様にしながら竜持は「おかえりなさい」と言った。
凄く涙声で今はそう言ってる場合じゃないだろと呆れながら「ただいま。」と返してから「で、何があったんだ?」と問いかけてみれば竜持は涙を浮かべながら押し黙った。
こう言うところは子供なのかと納得しながら、はぁと溜息を吐いて自分の荷物を竜持に預けた
「とりあえず虎太を迎えに行ってくる。帰ったら飯にするから風呂作っておいてくれよ。あと荷物は部屋に置いといてくれ。」
そう言いながら竜持の頭を人撫ですると鍵をポケットに仕舞い込んでから玄関を出た。
まだ暖かくなりきっていない風が寒いから早く虎太を探しておかないとなと思い、玄関を閉めた。
竜持は誰からも見えないことを良いことに、先程まで堪えていた涙を流した。
流してから、凰壮の指示を遂行しようと思い、立ち上がった。
持ち上げようとした従兄のバッグは予想以上に重かった。

――案外単純なモノで虎太の居場所はすぐ判明した。
近くに桂とウキがいたからでもあるし、家からそう遠く離れた距離じゃなかったからだ。
ウキは俺の顔を見るや少し驚いた顔をしたが口元に人差し指を当ててから虎太の頭を撫でた。
そしてからじゃあ、僕はそろそろ行くねと俺に言うとまだ虎太を心配そうに窺っている桂の手を引いて帰って行った。
よっこらしょっと虎太の隣に腰を下ろせば虎太は睨む様に俺を見つめ、
「何でいんだよ」
と短く問いかけてきた。
何故と言われても正直困る。
晩飯を虎太と竜持に食わせなきゃとかお前が飛び出していったからだろとか言いたいことは山ほどある。
だが敢えてそうは言わず俺は立ち上がり、伸びをしながら一つのことを言った
「お前と竜持の間に何があったか知らないけどさ、竜持にも思うことがあるんだと思う。だからさ、その竜持の考えも含めて色々と考えてやれよ。何かあったら俺が受け止めてやるからさ。」
そう言って虎太の頭を軽く叩いた。
虎太は驚いた様に目を見開いたが直ぐに可笑しそうに笑い
「凰兄に受け止めるなんてできんのかよ」
と言った。
お前ら双子の為だったらやってやるさと言えば竜持が訊いたら凄く喜ぶぜと何故か言われた。
そうなのかと首を傾げていれば虎太が何処か決意した様な目をしていった。
「俺はちゃんと凰兄のあの日の意志を受け継いで銀河一になってやるぜ」
覚えていたのかと何処か驚いたが嬉しくなって顔を歪めてから
「おう、頼りにしてるぜ」
と虎太の頭を掻き撫でた。




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