迷子



失敗したと思った。
勝手な行動は基本しないのだがあの時はどうしてもその場から離れたかったのだ
理由は分からない。ただあのまま橘さん達の近くにいたら自分の何かが傷つく。そんな感じがしたのだ。
ジュースを買いに行くと言って離れたのは良いが正直この会場に来るのは初めてで自販機の場所なんてよくわからなかった。
やっと自販機を見つけて飲み物を購入し、みんなと合流しようと思い、足を動かそうと思ったところで重大な事に気がついた
みんなが何処にいるのか正直知らない
桜井がメールで教えてくれたがそのエリアが分からない。
近くに看板はないかと見回したがそんなものは何処にも見当たらないし、近くにあるコートが何処のブロックのモノだかも分からない。
どうするべきか。
迷っていてもしょうがないからと看板を探そうとして歩き出した瞬間何処かの学校の選手の列と衝突しかけた。
多分自分が小さいから相手からは見えなかったのだろう。相手は自分を避けることすらせずに直進してきた。
それに気がついたのは後何pで当たるかと言う時だ
こっちも看板探しで気がつかなかったが誰かに手を取られてぶつかると言うことは免れた
バランスを崩して倒れ込んだ顔の先には柔らかい感触があり、胸に顔を埋めていると気がつくのに時間は要らなかった。
時々泣いてる自分を慰めるときに抱き締めてくれる桜井のモノと同じくらいだろうと思われる。
自分は何を考えているのだろうかと我に返ってとりあえず相手が解放するのを待った
「――ちゃんと前見ろッちゅー話やな。女の子を傷モンにする気かド阿呆。」
自分を抱き締めている人がそう言ったのが聞こえた。
先程の学校の生徒だろうか、よくわからない言葉を二回繰り返していたのが聞こえた。
もしかしたら方言で「ごめん」と言ったのかもしれないが何処の方言かを特定できるほど自分の頭は出来ていない。勿論馬鹿でもないけど。
やっと腕の力が抜けて行くのを感じてゆっくりと顔を持ち上げた
クリーム色が途中から黒くなっている髪がそこにあった。
黄色と緑のジャージは大阪の四天宝寺の物では無かっただろうか。
「自分も、何を探してたんかしらへんけど注意しいや」
女性はそういって微笑んだ。
俺はとりあえず出せるくらいの声ですんまそんと謝った。
普通は怒られるであろうその謝罪も彼女は微笑んで許してくれた
「自分は・・・不動峰の子か。何で来ないなところにおるんかしらへんけどもしかして誰かを捜してたん?」
彼女は俺のジャージを眺めるとそう言った。
迷子だと言えない自分はこくりとだけ頷いた。
彼女はふーんと言ってから「何処のエリア?」と問いかけてきた。
俺は桜井がメールで教えてくれたエリアを言うと彼女は何も言わず
「うちも今からそこに行く予定やったから一緒に行ったるわ」
と微笑んだ。






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