そして彼は自分の時を止めた




――そして奴は儚げに微笑んだまま奴は時間を止めた。

奴が倒れたと聞いたときは正直相手にしていなかった。
だって俺より健康そうな奴だ。まさか倒れるなんて誰が思うんだ。
それでも奴は発作を起こし、近くの大学病院に運ばれた
そしてそこで入院をしたのだ
部活が終わったらすぐ病院に向かった。
そうすれば奴は力なくも嬉しそうに微笑んでから俺を迎え入れた
それが続いて半年経つか経たない12月中旬
奴は自分の時を止めやがった。
退院したらサッカー遣ろうと約束したのはここ最近になってだ。
それがこんな早くも破られるとは思わなかった。
なんでだと問い続けたかった。
この日に限って急に部活が無くなったのはこれが原因だろうかと疑いもした。
早く会いたくて駆けだした足は看護師に告げずに奴の部屋に向かっていた
到着して開けた白い扉は天国に見せかけた地獄だった。
人が奴を囲むかの様に立っていて急に現れた異色である俺に一気に視界を集めた
囲んでいる人の中には彼奴の幼馴染み的存在の植松と内村が居て、二人は俺を見るや否や何かの糸が切れたかのように俺の名前を呼びながら泣き出した。
理解出来ずに訝しげに担当である医者は俺に「君は」と問いかけてきた。
いつもの皮肉も出すことが出来ずに植松がとうとう号泣しだした内村を慰めながら「彼の親友です」と答えた
親友になった覚えなんざねーよと想いながら"恋人だ"と言った方が問題だと瞬時に気がついて「降矢凰壮です」と軽く頭を下げた。
医者は悲しそうに眉を潜めながら「そうか」と呟きゆっくりとこちらに近づいてきた
そうして俺の両肩に手を置くと
「つい先程、浮島悠斗君はご臨終になさった」
と簡単に告げた。
それでも俺の脳みそはすぐに理解出来ずに何度も臨終という言葉をそしょくした
そうしてやっと本当の意味を理解したとき、俺は医者を押しのけて悠斗のベッドに駆けだした
そうして近くに寄り添っている母親らしき人を押しのけて悠斗の横まで来た
悠斗が座って微笑みかけてくれていたベッドには白い布団とその上から出ている真っ白な腕。そしてその上側には真四角の布が掛けられていた
俺は震える腕を押さえながらその布をゆっくりとはがした
するとそこにはこれ以上ないと言うほど真っ白い顔をして、口も瞼も閉じた悠斗の顔があった。
その顔は儚げに微笑んだまま動くことはなく、その口も鼻も呼吸をすることは無く、胸は一定に止まったままだった。
涸れていたと思っていた涙が自然に目から溢れだしてきたのが分かった
俺は布団から出ている右手をそっと両手で包むと止めどなく流れ出す涙を止めることなく声を殺して泣いた。

彼の顔は困ったように笑うことはなく、腕は慰めるように動いてはくれなかった。




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