好奇心は竜も食わない ※3Uが腐男子 腐女子な彼女持ちはどんな気分なんだろうかと思うときがある。 しかも非ヲタであることを条件にしておく。 多分数少ないのだろうが、この気持ちを味わっているのは他にもいて欲しいと願う反面この気持ちは僕だけで留めておいてあげたいと思う。 とは言っても僕は彼女持ちではない。いや、個人的に彼女のような位置にいるがその人はれっきとした男でホモでもバイでもオカマでもない。 彼の可笑しいところ…いや、おかしいと言ったら失礼だ。彼の個性の一つが凄く一般的ではない。 彼は俗に言う、"腐男子"と言う存在だ。 腐男子とは何か、僕も詳しくは知らないけれど男同士が絡み合うBLを好きな男の子とを言うと思っている。 僕と彼のような関係を好いている人を言うらしい。本当に詳しく知らない。 彼に問いかけてみれば彼は少し太い眉毛をハの字にして困ったように笑うだけだ。 きちんと回答をしてくれたことは皆無に等しい。 しかも彼の親友の浮島君と内村君も腐男子の一人らしい。 本当にこの世の中どうなっているんだと疑惑に思うが、何分僕も男である彼を抱きたいとさえ思う身だし、その趣向を否定する気はない。 楽しめるなら構わないだろう。他の人に迷惑を掛けなければ・・・・の話だが。 だから腐男子である彼を否定する気もないし、腐男子だからと言ってこの恋を諦めるつもりはない。 彼が腐男子だろうが無かろうが僕は彼の事が好きなのだ。 高校3年のある日、僕は彼の家に泊まった。 彼の勉強を見るためと、家には僕1人という状況になりかけていたため一人暮らしの彼の家にお邪魔させて貰った。 それに次の日はお互い学校も休みで効率が良い。そのまま明日は二人でデートでも繰り広げようと話し合った。 僕は案内された彼の部屋にお邪魔しますと言って入った。 正直ここに来るのはもう数え切れないほどで、部屋の位置も分かっているのだが、彼は毎回案内してくれる。 相変わらず片付いた部屋に座布団が敷かれたところに僕は座った。 彼はそのまま冷蔵庫を開け、僕に出す飲み物が無かったのか「あ。」と短く声を漏らして戸を閉めた。 そして僕を見ると「飲み物買ってくるから待ってて」と言って僕が止めるのも訊かず彼は靴を雑に履いて外へ出て行った。 僕はハァと溜息を一つ吐いてから何度も見たその部屋を見回した。 特に何も変化がある訳じゃないし、浮気の跡も見当たらない。 僕はやることなくて手短にあった扉に手を掛けて開けた。 流石に恋人とはいえ遣ってはいけないことだと分かっているが、独占欲が強いらしく、彼の事は何でも知っておきたかったのだ。 それに、そこは彼が僕がいるときに一度も開けることのない扉だったから尚更だ。 僕はその扉の中にあった物に目を何回も瞬きさせてみた。 それはどこからどう見ても彼の好物とも言える薄い本であるのは確かだ。 表紙のイラストは見たことがある。多分浮島君の物だろう。 ただ書かれている物の問題だった。 表紙には「創作」と書いてあり、明らかにBL物だった。 気になったのはそこではなくキャラであり、片方がどこからどう見ても僕と彼が昔いたサッカーチームのキャプテンで、もう一人は見るからに服の緑の多さや髪や目の色からして"僕"だろう。 好奇心で開いたページには作者が書いてあり、彼のHNが書き込まれていた。 どうやら小説らしい。しかも名前は少し変えてあるがどっからどう見ても僕とキャプテンだ。 まさかね、と思った瞬間に、ドサッと重い物が落ちる音がした。 顔の体温が一気に下がるのを感じながら勢いよく音の方を見た。 すると顔が青ざめた彼が手を振るわせながらそこに立っていた。 多分落ちた物は買ってきた飲み物だろう。 流石に種類までは確認できるほど落ち着いていなかったが、彼の足下にコンビニのビニール袋とその中から大きめのペットボトルがいくつか飛び出ていた。 彼は震える指で僕の持っている本を指さして 「そ・・それ・・・」 と呟いた。 僕は本当に申し訳なくなって彼に謝りながら彼に手渡した。 彼はそれを受け取ると一瞬チラッと表紙を見つめると適当に新聞紙などが置いてあるところに置いた。 そして一つだけ「勝手に探るなっていったじゃん」と呟いた。 今回ばかりは本当に申し訳なくて只ひたすらに「すみません」と謝り続けた。 そして落ち着いてきたのか彼は一つ息をつくと 「これね、竜持に告白される前に書いた奴だよ。多分分かったと思うけど昔は竜持×翔君が好きだったんだ」 と白状した。 今まで付き合っての知識だと僕×翔君と言うことは僕がタチで翔君がネコと言うことだろう。 現実を言ってしまえば僕は小学六年生の時から彼一筋であるし、翔君はサッカーと結婚する勢いだったし、僕から見て翔君は頼りになる"キャプテン"という存在だったためあり得るわけがないのだが。腐男子の妄想力という物は本当に恐ろしい。 というか今、"昔は"と言わなかっただろうか、 「あの・・・植松君、」 「な、何?」 僕が凄く余所余所しく訊く物だから彼は凄く心配そうに応えた 「昔はと言うことは今は・・・?」 彼が腐男子脱をしていないのは知っている。腐男子でも僕はあまり気にしていないし、熱中している彼も可愛い物で僕はとやかく言うつもりはない。 だけれどやはり気になる物で・・・ 「今・・・?今は一転してゴンタギに萌えてるよ?」 訊かなければ良かった・・・青砥君、多義君。逃げてください。 好奇心は竜も食わない (甘さなんて欠片もない・・・!) ―――――――――――――――――― 勿論彼らは二次創作も好きですよ |