とおりゃんせ とおりゃんせ
此処は何処の 細道じゃ
天神様の 細道じゃ
ちょっと通して 下しゃんせ
御用のないもの 通しゃせぬ
この子の七つの お祝いに
お札を納めに 参ります―――



叔母さんに手を引かれてその寺に行ったのは小学一年生の頃
寺なのに幾重にも並ぶ赤い鳥居を潜りながら階段を踏みしめた
暫く歩くと叔母さんは急に立ち止まった。
どうしたのかと思って下を向いていた顔を持ち上げて叔母さんを見た
そしてから叔母さんの視線を追った
視線の先には所謂山伏の服を身に纏い、顔に天狗のお面をあてがった男の人がいた
漆黒の髪と背に付いている羽が風に揺れていた
叔母さんは口を開くと此処は何処の細道か、と問いかけた
男は優しそうな声で応えた。天神様の細道だと
叔母さんはならばと前置きをして、
「そこを通していただけないでしょうか」
と問いかけた。
男は首を横に振ると
「ご用のない者は通すこと叶いません。あなた方はどの様なご用で」
と問い返してきた。
叔母さんは怯むことなく、淡々と俺の手を引いて自分の前に出すと、俺の肩に手を置いていった
「この子の・・・凰壮の七つのお祝いに札を納めに参りました」
俺は状況を飲み込めず、男と叔母の顔を交互に眺めた
すると男は鈴をしゃんと鳴らすと、俺に近寄り始めた
叔母さんはそれと同時に一つの札を持たせ、近寄るようにと俺の背中を押して施した
俺は言われるまま近づくと、男は優しげな声色のまま
「鳳凰の少年か、ならば受け取ろう」
と言った。
俺は何のことか分からずに首を傾げながらも、叔母さんから受け取った札をとりあえず男に渡した。
男はそれを受け取ると懐にその札を納めた。
そして言う。
「さぁ、元来た道を戻るんだ。何があっても絶対振り返っちゃいけないよ」
俺は言われるまま元来た道を辿った。
叔母さんの姿は何処にも見当たらない。先に行ったのか、おいてきたのか分からないけれど、男の言葉を純粋に飲み込んで背後から聞こえた叔母さんのような声に応えず、振り返らず階段を下りた。
そして最後の鳥居を潜った瞬間に意識が無くなった。


それから幾年
叔母さんが不審な死を遂げてから7年。
俺は叔母さんに言われたことを守ってあの寺に向かった
そして幾重の鳥居を潜り、階段を踏みしめた。
あの時と同じ風を感じて俺は顔を持ち上げた。
視界の先にはあの時の男が変わらない姿のまま立っていた
俺は叔母さんがあの日言ったことをそのまま告げる
「そこを通していただけないでしょうか」
以前と違って男は天狗のお面を横にずらした。
そして蛇のような片目でこちらを見つめる
「ご用のない者は通すこと叶いません。貴方はどの様なご用で」
俺は肩に掛けていたボストンバッグから叔母さんの遺影を取り出すと言った

「この方の七つの弔いに、お札を納めに参りました。」



行きはよいよい 帰りはこわい
こわいながらも
とおりゃんせ とおりゃんせ





(天神様は鳳凰を優しい目で見つめた。)





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