部活



「謙!!」
謙を呼ぶ声が女テニの敷地に響いた。
ランニング終わったばかりで一息吐いていた謙はその声に顔を上げた。
大好きな親友がそこにいた。
謙は調子に乗って疲れ切った足をふらふらしながらもしっかり踏み込んだ
「どないしたん?」
そう聞けば健は苦笑しながら「お前のがどうしたんや」と問いかけてくる
いや、調子乗って走りすぎてもうてと笑えばお前馬鹿やろと笑い返される
正直言って、健の笑顔は好きだ。
健は良い笑顔で笑う。正直言ってこの笑顔を無くしたくない。
―――――――・・・・・一生
「で、結局どうなったんや?」
白石との会談。
それを訊いた瞬間健の顔色が一気に変わった事に謙はきがついた。
何かあったのだろうか。すごく不安げに謙は大切な親友を見つめた

「―――謙、ミクスドに回ってくれへんか」

――その瞬間時間が止まったような気がした。
二人の周りは忙しそうに動いているのに
やっとの事で謙が口を開いた
「―――んでや・・・」
健は聞き返すわけでもなく静かに謙を見据えた。
彼女にはこの反応が分かっていたのだ。
「何でや!!うちとダブルスで全国狙おうて約束していたやろ!!?」
健に掴みかかりながら謙はそう言った
違う。そんなんじゃない。そう叫びたくても言葉が喉につっかかってしまう
「うちが嫌になったんか!?」
そう凄く悲しそうな瞳で言う謙に健は口を開いた
「ちゃうねん、白石の希望なんや」
"白石"という単語を聞いて謙の腕は一瞬ぴくっとした
「男子テニス部の要請訊いてやった方がええやろ」
寂しげに微笑みながら健はそう言った。
実際そんなこと微塵にも思っていない。
だけど、これはある意味チャンスなのだ。
ならば、頷かせて行かせるまで。
「謙の気持ちは痛いほど分かるしむっちゃ嬉しいねん。うちかて一緒に行きたいわ。」
だけど、謙のためだ。そう自分に言い聞かせた。
彼女はもしアレを心配しているならば、彼女を安心させるために健は守り抜かなければならない。
「何があっても謙を守るんは俺やから」
白石なんかにこの位置だけはくれてやるもんか。彼女はそう心の底で思いながら微笑んだ。


「一氏さん」
そう声かけられて一氏は振り返った。
そこには最近転校してきた千歳の姿があった
「なんや、千歳か」
そういえば彼はやほっと手を挙げた
「なんや、小春になんか用か」
嫉妬丸出ししながらミクスドパートナーの名前を出す彼女に千歳はあははと笑いながら
「いや、小春に用は全くなかと」
と素直に答えた。それを訊いた一氏は「それはそれで腹立つわ」と言って財前に「どっちすか」と突っ込まれたのは言うまでもない
そうだと思い出したとばかりに千歳は先程白石に言われたことを伝えようと口を開く
「白石から言われたばい。忍足さんがミクスド要員で来るとね」
そう言った瞬間に一氏は「ちょいまち!!」と声を荒げた
なんねという千歳に向かって彼女は自分の友人を浮かべながら言葉を並べた
「誰がミクスドに来てもかまへんけど、何で謙やねん!!?謙は健ちゃんやないと・・・・・」
また・・・あれが・・・。
そう最後に言った言葉に千歳は眉をしかめた。
アレとはなんだろうか。
そう思った途端に一つ声が聞こえてきた
それはまるで一氏を宥めるかのように発せられた声だった
「謙と組むんは財前や」
その声に一氏も千歳も振り返った
白石がそこにいた。後ろには謙を引き連れて。
そして補足するかのように「本人からの希望や」と付け加えた
それでええな?と問いかける白石に財前はiPodにイヤホンを巻き付けながら応えた
「俺はかまいまへんけど、謙さんはほんまにかまへんのですか」
確か先輩は小石川先輩と・・・・そう言おうとした財前の言葉を謙は断ち切るように「ええねん」と割り込んだ
みんなの視線が集まる中謙は言葉を続けた
「今の女テニにミクスドにいける戦力を持った選手は部長である健を抜いたら俺ぐらいやし
――――だから大丈夫や」
それに健が守ってくれるから・・・そう思いながら目一杯微笑む
みんなを心配させないために
それを見た人たちは皆複雑そうな顔を浮かべる。
そして、今度は俺が彼女をまもらな。そう白石は一人思った。






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