あの子はだぁれ

翔独白


僕が"彼ら"に与えられたのは"言葉"だった。
生物界にあり得ない言葉。動物の言葉。超音波。色んなモノを"彼ら"から与えられた。
彼らに対してそこまで恨みはない。
手術は痛かった。凄く痛かった。喉が張り裂けるように痛かった。
だけどあの人達に恨みはなかった。
だって、みんなして彼らを嫌ったら彼らが存在する理由がなくなっちゃうと思ったから。
それを前に花島さんに言ったことがある。
あの人は大きく目を見開いてから優しく僕の頭を撫でて「翔は優しいな」と言った。
でもね、花島さん。僕のコードはSYOだったかもしれないけど僕はみんなと違って翔じゃないんだよ。
それでも頭を撫でてくれるその手が温かくて口を閉ざした。
ずぅっとこのままの幸せが続けばいいのに。

僕たちプレデターの主な任務は"実験台の子供を救出すること"だ。
それは多分僕たちが実験台の子供だったから課せられたのだと思う
いつも花島さんは眉間に皺を寄せながら任務を説明する。
この前エリカちゃんと話したけれど、実験台の子供達に対してなのか任務を実行する僕らを心配してなのか分からない。
僕は頑張ってプレデターをまとめるモノとして、"あの人達から貰った"大声で指示をする。
それがこの前だけはおかしかった。
いつも以上に声を出したからか喉から鉄の味が込み上がってきた。
抑えられなくて吐き出すと、鉄の床に赤い液体がこぼれ落ちる。
自分の口からだと理解するのに時間が掛かって、僕の声が聞こえないことに不思議を感じながらも凰壮君が代わりにコーチングを変わってくれた。
声が出ない。
こんな経験は初めてで、ものすごく動揺した。
声を出そうにも喉からはまるで貫通しているかのようにヒューヒューという風を切る音しか聞こえない
もしかしてと喉元を触ってみても切れていたり貫通している様子は無い
おかしいなと思った瞬間また喉に鉄味のモノが込み上がってきて床にまき散らす。苦しくて息を整えようにもヒューヒューという風を切る音が耳について嫌気が胸の中で広がる
目の前がチカチカとした瞬間に足が崩れ落ちる
玲華ちゃんが受け止めてくれたのは分かったがそれ以降は意識が無くなって何も覚えていない。
内村君が治癒能力を使ってくれたお蔭でなんとかすぐに意識を取り戻せたんだけど喉は治る気配が無くて、内村君も駄目だったと首を振った。
丁度任務が成功して、子供達もエリカちゃんが施設に送った後だったから良かったモノの、僕は一人足手まといになったのが悔しくて仕方なかった。
虎太君はそんな僕を見計らったのか、僕の首の後ろに軽い電流を流して気絶させた。
二度目の意識喪失の際二つしばりの女の子が泣いていた気がしたんだ。
プレデターにはそんな子がいないのに。
    
(これが翼という少年。)






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