父親肌



正直浮島は父親のようだ。
勿論虎太のが風格のある親父って感じがするけど、浮島は保父さんって感じがする。
そんな話を竜持にしてみれば大爆笑され
「凰壮君は浮島君を結構見てますよね」
と言ってきた。
話が繋がってねーし俺はそんなに浮島を見てなんかいない。
試合中は寧ろ翔を気にしてるし、浮島は殆ど自分の背中を見せてるようなモノだ。
背中を見たと言えば守備の時とかショウサンの時くらいだ。
あとは車からの乗り降りのときくらいで・・・・
そう思えば確かに結構浮島を見ている気がした。
それがなんだか悔しくて奥歯を噛みしめた。
竜持にバレてたというのが一番気にくわない。
竜持のおかしそうに笑う声が耳さわりに思えて一つ舌打ちしてから乱暴にリビングの扉を開けた。
そうしてから閉める事もせず乱暴に靴を履いて外へ飛び出した。
頭を冷やすために。

それからしばらくしてから無意識にジョギングしていたことに気がついた
ジョギングというか何かから逃げるかのように走ってたのかもしれない
荒くなった息を整えようと軽く歩き始める。
やっと落ち着いてきたから眼の端に映った公園の中に足を向けた
空いているベンチに身軽に腰を下ろす
ふぅと深いため息を吐いてから公園の中に眼を向ける
自分より幼い子達が一生懸命になってボールを投げて、取って、追っての繰り返しを続けている
それを見て微笑ましく思える。
正直幼い子は嫌いじゃない。ただギャーギャー言ってくるのは苦手だ。
耳が痛くなるし、他の人の迷惑になる。少しくらい落ち着いていた方が良いと思う。
もし虎太に子供が出来たとしても俺の苦手な子は生まれないだろう。相手の血にもよるけれど。竜持は・・・・違う意味でうるさそうだ
そうやって兄たちの子供を想像していると大きな泣き声が聞こえた
うるせぇなと思って顔を上げる小学4,5年生が寄って集って先程まで遊んでいた子達をいじめてるではないか
子供の泣き声は確かに耳障りだが、寧ろ弱いモノいじめしている奴らに苛立ちが芽生えた
止めろと制止をかけようと立ち上がった瞬間一人身長が大きい奴が近づいていった
浮島だ。と気付いたのは虐めてた奴らが逃げ出した後だった。
浮島はそれを確認すると泣き出した子供に微笑みを浮かべたままもう大丈夫と繰り返し言って頭を撫でた。
まるで父親が泣き出したわが子をあやす様に見えて、もう一度浮島は父親みたいだと思った
泣き止んだ子は満面な笑みを浮かべると頭を下げてお礼を述べた
それから「お兄さんも一緒に遊ぼう」と浮島を誘ってきたのだ
自分が醜いなと思ったのはまた虐められないために誘ったのだと思った瞬間だった。
ただ彼らは純粋に彼と遊びたいだけなのである。それは分かっているがそれでもそう考えてしまった自分が醜い。
浮島は笑顔でいいよと答えてからこちらを見てきた。
そして大きく手を振ると
「凰壮君も一緒に遊ぼうよ!」
と叫んだ。
そんな大きい声で呼ぶな恥ずかしいだろと思いながらも俺は悪くないと思い、一つ息を吐いてから彼へと足を進めた。
半分くらい歩いたとき彼は両手を広げて「おいで」と言ってきたのでふざけんなと返してから中指をたてた
彼はそんな様子も気にかけずあははと笑っていた。



やっぱり浮島は良い父親になると思う。
(「それいったら凰壮君は母親みたいですよね」と竜持は言った)



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