末の進路 「・・・・凰壮君何してるんですか」 「勉強してんだよみりゃわかるだろ。」 リビングに行くと凰壮君が赤いピンを付けて、襟首の長い毛をゴムで縛って参考書を開いていた。 これまた珍しいと思いながら彼に近寄る。 参考書を覗けば数字が並んでいた。 数学か、と理解した瞬間勉強していた張本人は急に「ああぁぁああぁあああ!!!」と声を上げた。 吃驚して顔を上げると彼はめんどくさそうに参考書を見つけた。 「何で急に勉強を?」 と問いかければ彼はこちらを一瞥しただけでノートと参考書に目を向けて 「大学、進学するから」 と答えた。凰壮君から進路を訊くのはこれが初めてで、大学へ行きたいなど知らなかった。 てっきり親のため就職を選ぶと思っていた。 「凰壮君が進学って意外ですね。どこに行くのですか」 と問いかければ彼は体育系大学を口に出した。 彼は未だにプロのスポーツ選手を目指しているのか、最近そんな様子は見られなかったが・・・・。 「・・・・体育教師になりたいんだよ。」 彼はそう言ってぼそっと呟いた。 え?と思って彼を見つめると彼の目は本気を語っていた。 本当に意外だった。 だが考えてみればこの頃凰壮君は色んなスポーツに手を出していた。 それがまさか進路に繋がっているというのは想像も付かなかったが。 いつの間にかこの道には一人しかいなかったという訳か。 それでも全員それぞれの道を歩んでいるという実感が湧いて少し嬉しかった。 虎太君はサッカーの選手。僕は学者。凰壮君は教師(しかも体育) 何かが似てるようで何かが違う。 なぜかそれが僕らは一人で違うという感じがして心地が良い。 やっぱり僕らは三つ子なんだと思いながら凰壮君の前の席に座った。 一回なんだよという目つきでこちらを見てきたが気にした素振りを見せずに凰壮君が止まっている問題を指さして解き方を教える。 正直此処は僕の得意分野だ。 凰壮君は分かったのかありがとうと言うとすらすらと問題を解き始める。 彼の勉強を見守るうえで一つ気になったので聞いてみる 「ところで体育教師と言うことは保健もやるんですよね?」 性教育とか、そう言おうとした瞬間目の前に拳が飛んできた 末の進路 (だけれど目指す理由を教えてはくれなかった。) |