ずっと待っていた



男女の名前を呼ぶ基準というのはどこら辺なんだろうか。
友人になったら?恋人になったら?家族になってから?
それが分からなくて愛しい相手の名前を未だに呼んでいない。
彼女とは長い付き合いで、恋人として付き合って軽く一年と半年は経っている。
それでも自分は彼女の事を未だに名字で呼んでいる。
相手は自分の事を名前で呼んでいるがそれは自分が三つ子で名字だと誰だか分からないからだろう。
甘い雰囲気のかけらも存在しないのだ。
その事を弟達に問いかければ見事に大爆笑された。
そんなに笑わなくてもいいだろと顔をしかめていると竜持が「すみません」と謝罪した。
凰壮は息を整えようとしながら「まさかまだ"西園寺"呼びなのか?」と問いかけてきた。
誰のことか当てられてまたムッとする。何で分かってしまうんだ。そうか、三つ子だからか。
「分かってるなら教えろ」
と短く言うと二人は顔を見合わせて溜息を吐いた。
だからなんなんだと思えば竜持がこちらを見てから質問に答えた
「そう言うのには基準がないのです。急に名前を呼んでも良いですし、まぁ律儀に名前を呼んでも良いかと問いかけても構いません。」
それは相手次第ですから。
「まぁ、実際虎太だって翔のことどういう経緯で呼び捨てにしたのか覚えてないだろ?」
そう言った凰壮に翔と西園寺は別物だろうと睨み付けた。
だが凰壮は「一緒だろ」と返した
「確かに性別は違うかもしれないけど、翔も西園寺も人には違いないだろ。
それとも虎太は性別で区切りを付けるのか?」
そう言うつもりじゃない。
ただ翔は友人だが西園寺は恋人だ。まずそこが違うだろ。
そう思っていると竜持が苦笑しながら
「ともかく明日逢うのでしょう?その時に勝手に呼んでみるのもよし、質問するのもよしですよ。」
虎太君なら出来るでしょう?そう言った
俺はとりあえず分かったとだけ応えて寝るために部屋へと向かった。


次の日、何故竜持が俺と西園寺が会うのを知っているかを今更ながら疑問に思いながらリフティングをして待った。
数分も経たずに西園寺は現れた。
どうやら走ってきたらしく、息を荒げながら「ごめんね、待った?」と問いかけてきた。
俺は「別に」と短く答えてリフティングを止めた。
そっかとホッとした笑みを見て不覚にもどきっとする。
此奴はサッカー遣っているときと笑っているときが好きだ。
さて、いつ名前を呼ぼうかと思案していると
「早く始めよう」
と西園寺が準備をし始めた。
流石に少しは休むべきだと思い、声を掛けようとした。
だけど何故かそれをためらった自分が居た。
西園寺よりサッカーのが優先な自分が憎くて仕方ない。
だけどやはり顔も真っ赤で休んで欲しくなって呼び止めようとした
「玲華、少し休めよ。」
そう言ってから口を抑えた。
無意識に名前の方を呼んでしまったのだ。
視線を彼女の方に向けると彼女は驚いた顔をしてこちらを見た。
どことなくさっきよりも真っ赤になっている彼女に「悪い」と謝った。
彼女は両手を振って「謝らなくて良いの!!」と言った。
どういう事だと訝しげに彼女を見つめると彼女はやんわりと微笑み
「名前で呼んで貰えて嬉しかったの。ずっと呼んで欲しいななんて思っちゃって・・・ごめんね、図々しくて」
と言った。
別に図々しくなんて思ってねーしと思いながら
「わかった。」
と短く答えた。
「分かった。ずっと一生名前で呼んでやる」
そう続けて言うと玲華はまた目を大きくしてから嬉しそうに微笑んだ。


ずっと待っていた
(やっと名前を呼んでくれた。)




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