昼 ―side健




昼食の時間、皆各々に昼食を取る為に友達と席をくっつけたり、他の教室へ移動したりと賑わいだし始めた。
そんな中一つのクラスの一角で席を4つ合わせて座り合う女子がいる。
4つ席を合わせてはいるけど3人しか座っていないのは一人、部室に置いてきた弁当を取りに行ってるためである。
そういえばと髪が緑がかった女子生徒、一氏ユウが目の前に座る女子生徒、小石川健に話しかけた。
「聞いたで、健ちゃん。2組の貴公子に喧嘩売ったらしいな」
話しかけられた健は紙パックの烏龍茶に口を付けながら「おん」と短く答えた。
するとその健の隣に座っていた女子生徒、忍足謙は大きく目を見開いて、隣と斜め前の少女を交互に見ると驚いた声をあげて「何しとんの!!!?」と隣で呑気に烏龍茶を飲んでいる友達にツッコミをいれた。
健はちょっとだけストローから口を離すと何を言ってるんだと言う顔で
「いや、だから何って喧嘩売ったんや」
と言った。
ツッコミを入れた女子生徒はいやいやいやと何度も言うと健に訴えるように言った
「だって、あれやろ・・・?貴公子って、白石の事やろ・・・?」
ほんまに何やっとんの。そう言いたげに彼女は友人を見た。
貴公子と言えば、この四天宝寺中のテニス部を2年から今の3年までずっと部長として支えてきた白石蔵ノ介という男一人しかいない。
「いや、貴公子ッちゅーか奇行子の間違いやろ」
なんて冗談めかして可笑しく言う友人に彼女ははぁと呆れた溜息を吐くと椅子に座った。
ふと思い出したかの様にユウは「でもなんでまた」と問いかけた。
「謙の好きな人、知らんわけとちゃうやろ?」
そう言うユウに健は頬杖をついてから「だからや」と答えた。
「あの完璧人間が謙に似合うか見極めるんや」
謙はその光景に困った様に眉を潜めた。


「――――遅れてすまへんな」
その声でその場の雰囲気が変わった。
三人がずっと待っていたもう一人の友人―――石田銀が来たのだ
彼女は空いていた席に弁当をおくと座りながら遅れた理由を告げた
「今日は珍しく道が混んどってな、中々先に進まれへんかったんや、お腹空いとるやろ?先に食べててよかったやで?」
彼女がそう言うと謙はご飯を頬張りながらもうくっとると親指を突き立てた。
健はそんな謙の頭を一発軽く叩いてから銀にちゃんと弁当は見つかったのかと問いかけた
銀は弁当の包みを開けながら「大丈夫や、心配してくれておおきに」と微笑み答えた。
そして真っ正面に座る謙を見ると彼女は思い出した様に言った
「そや謙はん、今日放送の担当やったやろ。いかんでええの」
その言葉を聞いた瞬間その場の空気は一瞬止まった。
時計を見ると放送をならす時間まで後10分も満たない
謙は弁当の中身を口の中にかき込むと少し噛んでから飲み込み、そのまま弁当をかたすことなく「行ってきます!!!」と走り出した。
その様子に健は頭を抱えて溜息を吐いた。
銀は「そんな急かんでもええのに」なんて呟きながら謙の弁当を片付け始める。
その呟きを聞いたユウは「いや、自分が急かしたんやろ」と突っ込まずにはいられなかった。







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