覚めざらましを ――彼は今何をしているだろう。 そんな疑問が頭をよぎる 真っ暗の部屋の中頼りになる物は風に靡いて揺れるカーテンの隙間から映える月明かりくらい。 暑いから開けたもののあまり風が入ってこなくて寝着も汗で湿ってるのが伺える。 苦しくて寝返りをうってみたが暑さは一向に去る気配がない それよりも頭に浮かぶ彼の事が気になって仕方ない 今、彼は何をしているんだろうか 顔を持ち上げて見た窓から空を見て思う。 アメリカに行っちゃった彼が気になって仕方ない。 元気にやっているだろうか、怪我していないだろうか、嫌なことも越えて行ってるだろうか 自分から遠く離れて行ってるだろうか 気になって気になって上手く寝付けない。 ずっと彼を気にして寝れば彼は夢に現れてくれるだろうか。 そう思ってから自嘲的な笑みを浮かべる。 最近国語で万葉集を習ったからって昔の人みたいな考えをしている自分に恥ずかしく思えた。 思ひつつ 寝ればや人の 見えつらむ 夢と知りせば 覚めざらましを 口を開けてそう言葉を紡いでみる。 確か小野小町という人が逢えない男の人を思って歌った歌ではなかったか。 この歌を聴いたときは凄く切ないと思ったが今自分に合わせてみると寂しく思えてくる。 このまま夢に託してみようか そう思って瞳を瞑る。 すぅっと上手く眠りにつけて苦を感じることはなかった。 |