美咲とお出かけ

「なぁナマエ、八田ちゃん。ちょっと来てくれへんか」

出雲さんに呼ばれてカウンターに近づくと同じように呼ばれた美咲がもう並んでいた

「二人とも今から予定あるか?」
「いや、特にないですけど。何か用事スか?」

すると出雲さんはニヤリと何やら含みのある笑みを浮かべたあと、
どこからか2枚の紙切れを取り出した

二人揃ってその紙切れにグイ、と顔を近づける

「『私の愛をあなたに捧ぐ』…?映画のチケットですか?」
「せや、千歳がペアチケットをもらってきたらしいんやけど…
 相手がいいひんっていうことで俺に譲ってきたんや
 でも俺も店離れられへんし他に見に行くようなやつもいいひんからナマエと八田ちゃんに行って来てもらおうかなと」
「はぁ、まあいいですけど… 美咲もいい?」

美咲を見てみると帽子で目元を隠して何やらブツブツ呟いていた

「れ、恋愛映画を… ナマエと二人で…?」
「まあそんな緊張しなや、八田ちゃん
 そんな激しい内容じゃないはずやし」

そういってもまだ耳まで赤くしてる美咲
全くウブだなぁ

「美咲がイヤなら私いいよ?
 他に行く人探すし…」

そういうと、すごい勢いでこっちを向いた

「やっぱり…行く」
「なら決定やな 上映に間に合わんから早く支度しいや」

*

ただいま映画館内
さっき出雲さんから貰ったチケットの映画を鑑賞中、そろそろクライマックスに突入するぐらいまで話が進んだ

映画の内容は出雲さんが言ったとおり、そこまで激しい表現はなかった
二人の男女が出会い、障害を乗り越え愛を誓い合う
無難で面白い映画だった
たまにキスシーンなどが出てきて、乙女心がキュンとくすぐられて久々に恋はいいなぁ、なんて思った

私はこんな感じで普通の反応なんだけど…
問題は美咲の方だった

愛している、だの。大好き、だの。
とにかくそういうワードが出てくるだけで顔を真っ赤にしてワナワナと震えていた
どんだけ弱いのよ、と少し呆れながら私はまた映画へと目線を戻した



「はぁ〜、面白かったね!
 最後なんか久しぶりにキュンキュンしちゃったよ、私」

あれ、美咲に話しかけたはずなのに返事がない
彼の方を見ると魂の抜けたような表情でポカンとしていた

「男と女が…、抱き合ってキスしてた…」
「恋愛映画なんだから当たり前でしょ!もう、本当弱いんだから
 そんなんじゃ一生彼女出来ないよ?」

彼女、というワードに反応したのか急に焦った声で
「かっ彼女なんて、別につつつつ作らなくてもいいだろ!?」と叫んだ

「まあ美咲に彼女が出来ようが出来なかろうが知らないけどね」

本日何度目かの真っ赤な顔を放って私はスタスタと歩き始めた

「あ、おい待てよナマエ!」

足の速い美咲にはすぐに追いつかれちゃう

「美咲今日はありがとね、楽しかった」
「なんだよ、いきなり」

「私こんな体だからさ、あんまり一緒に出掛けられないじゃん?
 また機会があったら一緒に遊びに行こうね!」

すると美咲は帽子を目深にかぶって「お、おぅ」とぎこちなく返事をしてくれた

美咲の彼女にならなってあげてもいいかな、なんて考えながら
私たちはバーへとゆっくり帰って行った


[ 5/6 ]






第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -