多々良とお昼寝

ある日の午後、窓から差し込む太陽の光が眩しい
今日は体調も良く、平和な日だと思った


ところが、その考えを180度変えるような怒鳴り声がバーの中に響く

「八田ちゃぁん?鎌本ぉ?店の物に傷つけるなって
 何回も言うとるやろ?」

また懲りずに店のカウンターに傷をつけた美咲と鎌本が
出雲さんに鬼の形相で怒られているようだ

ちらりとそちらの方を盗み見る

首根っこを掴まれて宙に浮く美咲と苦しそうにしている鎌本が
こちらにSOSの目線を向けてくる

…巻き沿いをくらうのはヤだよ
目線を美咲たちとは逆の方に逸らした

すると、苦笑いをうかべる多々良さんと目が合う

「ここは俺が宥めておくからさ
 ナマエは二階にでも逃げておいたら?」


お言葉に甘えて私は二階の自室に避難しておくことにした


しばらくタンマツをいじったり、机の整理をしたりしているうちに
一階の怒鳴り声が消えた

やっと説教タイムが終わったのかな
そう思い、一階に戻ることにした




先ほどまでいた3人はなぜか姿を消しており、今ここにいるのは多々良さんだけになっていた

「あれ、ほかのみんなは?」
「今は外でお説教中
 草薙さんがマジ切れしちゃってさ、店の中じゃ狭すぎるって
 多分今頃、八田たちはボコボコだよ」

静かになった部屋の中をぼんやりと見つめる
こうやって多々良さんと二人きりになるのは久しぶりだと思う

ボーっと立っている私に何を思ったのか、多々良さん「ナマエこっちおいで」と
自分の膝をポンポンと叩く

「恥ずかしいよ」
「誰も見てないって
 ナマエが来てくれないと寂しいな」

上目使いでお願いされると心にグッとくるものがある

「じゃ、じゃあ…遠慮なく」

足の上に座るのは体重的にアウトなので足の間に腰を下ろす

「いい子、いい子ー」

こうやって頭をなでられると、本当に子供みたい

それから、今の趣味の話とか、吠舞羅のみんなの話をしたりしているうちにだんだんと
眠気が襲ってきた

午後の暖かな日差しと、多々良さんの体温とで睡魔に負けてしまいそうになる

「ん、ナマエ眠いの?
 俺もだんだん眠くなってきたんだよねー」

そういって多々良さんは欠伸を噛みしめた

「もう寝ちゃおっか!」

グラッと体が傾いた

「きゃっ、て本当に寝ちゃうんですか!?」

今の状況は二人で抱き合って寝ていることになる
顔に熱が集まった

「あはは、ナマエ顔真っ赤だよ」
「…誰のせいですか」

こんな顔見られるのは嫌だったから多々良さんの胸に顔を押し付ける

多々良さんの落ち着く香りに包まれて本格的に意識がシャットダウンしそうになった

「おやすみナマエ」
「おやすみなさい…」

頭をなでられながら夢の世界に旅立っていった

*

俺が八田ちゃん達を締めてから店に戻るとソファに二人の人影があった
「ホンマ、こうしてるとこいつら兄妹みたいやな」

そこには、あどけない姿で眠りにつく二人がいた



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