私はもともと、あまり不自由なく暮らしていた
あまり、というのは少しは不満があったからだ
何をして変わらない色相
皆からは珍しげな視線を向けられていた
それがなんとなく、疎外されている気分で居心地が悪かった
だから、あまり人目のつかない場所で読書をするのが日課となってしまった
本当は友達と一緒に遊びたかった
本当は周りとなじみたかった
本当は、
両親は、あなたの心が澄んでいるからよ。といつも励ましてくれた
最初はその言葉を信じた
でも、どんなに悪いことを考えたって私の色は曇らなかった
そこでやっと私は気付いた
私はこの世界で認識されない無意味な人間なんだ、と
涙は出なかった
心の中ではとっくの前に気付いていたのかもしれない
何もかもがどうでもよくなって、笑いさえこみ上げてきた
誰もいない空間に乾いた声が響く
少しだけ、哀しくなって
いつも行っている私だけの読書スペースへとぼとぼ足を進めた
そこで彼と出会ったのだ
「君は運命というものを信じるかい?」
私の前で儚い印象を持つ青年がふわりと微笑みながら訪ねてきた
どちらとも言えず、特に反応を見せずに黙っていた
「僕は君に出会えたことを運命とは思っていない
偶然ではなく、必然だったからね」
そう言って彼は私を抱きしめた
少し低めの体温が心地良い
人生の転換点
(たった一つの道しるべ)