春への1ページ

この春、県外へ引っ越す私が荷物整理に手間取っていると話したら、彼氏が手伝いに来てくれた。

そしてあっという間に今日目標にしていたとこまで片付け終えることが出来て、リビングで一服していた。



「ほんと助かった!ありがとね」

「…」


およっ?
だんまりして…何か悩んでのかな?



「どうしたの」



出したお茶を片手にこちらに向いたら、


「ありがとうなんて言わないでいいからさぁ〜」


と言ってわざとらしい笑顔にすごく、ものすごく嫌な予感が…



「たまには雪ちゃんからチューしてよ」

「…」

「チュー」

「……いやいやいや!それはやめよう!ね?」

「えー…まっそうだね、雪ちゃんは純情で照れ屋で恥ずかしがり屋だもんね」


こいつ!
人の気も知らないでニヤニヤと…!!



「片付け下手な雪ちゃんのために1日費やしてあげたのに」


半日だっての!


「県外に行っちゃったら、めったに会えないのに」


県外っていっても、あんたも同じ県に引っ越すじゃん!


「で、お礼がお茶だなんて…」


「よよよ…」口にそう出して泣く真似をするから、「なんて古風な!」…なんて突っ込みたかったけどチキンな私は出来なかった。



「今さら私からするなんて…なんか」

「…」

「そのーアレだよアレ」

「クックッ…赤くなってやんの〜」

「なっ!!」


私の反応を見てはあっはっは、と笑う。

ひとしきり笑ったら、



「いいよいいよ、気にすんな。ちょっと言ってみただけだし」

「…」

「怒んなって、俺が悪かった」

「…」

「雪ちゃん?」


少し不安そうな声色で、うつ向いて動かない私の顔を覗き込んだとき。



ちゅっ



「はい、コレがお礼」

「…」


めちゃめちゃ頑張ったのに、相手が口をポカーンとさせる顔があまりにもマヌケで、照れるよりも先に笑ってしまう。

そんなにも意外だったの?



「ゆ」


やっと口を動かした。

だけど…「ゆ」って何?




「雪ちゃんの口付けいただきましたー!!」

「ちょっ声デカイ!ばかっ!!」



-END-



Lips Drug
お題:雪の口付け / 「ありがとうなんて言わないから」

柚來
2012.02.27.





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