何故キスをしたのかと問われれば、わからないとしか言いようがない。
いつも通り、彼女と話していただけだった。あえて言うなら、いつもより彼女との距離が近かったからだろうか。
気がついたら彼女の唇に吸い込まれていたのだ。

こんなの言い訳にならないということもわかっているし、彼女に殴られても泣かれても仕方のないことだと覚悟をして唇を離した。

「ふぁっ」
「ファ?」
「ふぁーすときす…」
「え、マジ?」

彼女は舌足らずな喋り方でそう言った後、こくこくと頷いた。

恋愛経験少なそうだとは思っていたが、まさか初めてとは。
ファーストキスって、女の子にとって結構大事なものだよな…。

途端、罪悪感が湧いてくる。

「…ゴメン」
「や、謝らなくていいよ…」

でも、期待してもいいのだろうか。
不意打ちとはいえキスを拒まなかったことに。その赤い顔の熱に。

「…責任取る」
「へ?」
「彼氏になってやるよ」

なんて偉そうなセリフだろう、と自分でも思う。

そんな言い方をしたのは恥ずかしいのもあるが、いざという時冗談だと誤魔化せるようにと無意識に逃げていたのかもしれない。
我ながらズルイ考えだ。

「じゃあ、お願いします」

そう言って、ふにゃっと笑った彼女の柔らかな表情に罪悪感も自己嫌悪も全てが吹っ飛んでしまう。
キスしたのも告白したのも俺からなのに、彼女には敵わない気がした。



れたが負け



Lips Drug
お題:初キス / 「お願いします」

2012.01.26.





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