eight

緑間

坂江が資料室に逃げ込んだ。俺も続いて資料室に入る。はぁ、とため息をはいて辺りを見渡す。どうせ坂江のことだ、見つかりやすい場所に隠れているに違いない。例えば一番奥の隅っこだとか。
なんとなく予想をしながら一番奥の隅っこに近づく。よく見れば足が少し棚からはみ出ていた。いた、ゆっくりと一番奥の隅っこに蹲る坂江に近づく。真正面に立った頃には俺の影が坂江を覆った。
坂江が顔をあげる。顔を見てはっとした。こんな顔をさせてしまった。泣きそうな、なんとも言えない顔をしていた。最低だ、そう思い顔をひどく歪めた。どうすれば笑ってくれる。どうすればいつものように接してくれる。どうすれば、どうすれば。
気づいた時には俺は坂江を抱き寄せていた。坂江の顔を自分の胸に押し付けるように抱き締める。小さく、ごめんなさいと涙ぐんだ声が聴こえた。





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