どうして誰もなにも言わないんだろうか。恋愛禁止令が校則でなっているこの学園内で愛を囁きあう行為は禁止されている。見つかれば即退学・・・の、はず。しかし、あの囁きあいはどうも先生方、ましてや学園長先生にまで目が行き届いている。のに、なにも言わない言われない。

「ねぇリンちゃん」

「なぁに?おとくん」

「どうして、春本と翔は退学にならないの?」

「主語がないわよ。まぁ、あのことね、アタシも何でかは、わからないんだけど・・・」

シャイニーがなにも言わないから、と苦笑するリンちゃんから少し目を逸らしては彼らにちらりと目線を向ける。視線の先には抱き合っている男女・・・もとい春本と翔がいた。

「俺、雅が大好きだ」

『うん知ってる。私も翔が大好き』

にこにこと微笑みながら抱き合うその姿は端からみればまるで恋人。彼らは恋愛禁止令の意味をわかっているのだろうか
ぐっと眉にシワを寄せたところでどかん・・・いや、もっとひどい音をたてて空き教室の壁が学園長の形に穴が開いていた

「ハッハッハーッ!なぜ彼らが退学ならないか、教えてあげま、セーウ」

「うわぁぁぁっ!か、壁が・・・って、教えてくれんのそんな簡単に」

「イエース。Mr.イットキ、これは極秘デース。ばらせば即退学デース、ワカリマシタカ?」

「えっ、あ、は、はい」

突然飛び出して(突き破って)きた学園長の言葉にごくりと唾を飲んでは目を見開く。随分深刻そうな顔をして、それはだなぁ・・・と焦らしてくる学園長に正直苛立ちながらも我慢する。

「俺にも−・・・わからない」

「は?」

ぽけっと口を開ける。うぬぬ、と唸る学園長を殴り飛ばしそうになるのをグッと堪えて拳を握る。いいとしこいたおっさんがそれはだなぁ・・・とかじらすな。じらしぷれいをするな!

「わからんが・・・なぜか引き離してはいけない気がしたのさ。」

「運命、みたいな?」

「まぁ簡単にいってしまえばそんなものだ。あいつらにはいろんな愛が混ざりあっている。恋愛、家族愛、音楽愛、兄妹愛、そのたもろもろ。」

「・・・・・・」

「相性もバッチリな上あの二人は技術こそは足りないがうちの事務所に必ずしも必要な人材となる。そんな二人を退学にさせるわけにはいくまい。」

贔屓じゃん。そう思ったが確かに、あの二人を見ていたらなごむ。なんだよ、あいつらが付き合ってるなら俺らだって・・・なんていう気にはならなかった。
でもなんで・・・好きとは言えるのに手を繋いだりするのは恥ずかしいのかね


連載から抜き取り



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