アイツが羨ましいと思った。誰からも愛されて、俺には無いものをすべて持っている。周りからは期待され、男女問わずに人気があり、何にでも自分から進んでやる。まさに人間の鏡だと思った。
俺は周りから期待なんかこれっぽっちもされていなくて、寧ろ恐れられていた。生まれ持ったこの強力、それにプラスされ背丈や目力。男女問わずに避けられ、自分から進んでやることなんて一個もない。けどアイツは俺を怖がらず、人間として接してくれた。静雄くんは力持ちだね、なんて。あれはいつだったか、確かアイツが何か大荷物を運んでいたのを手伝った時に言われた気がする。
静雄くんは化け物じゃないよ、ちゃんとした人間だよ。静雄くんって優しいよね。いくつもいくつも、会うたびに俺の何かを痺れさす言葉がアイツの口から出てくる。ありがとうと、抱き締めたくて仕方がなかった。でも俺は優しく抱き締めることなど出来ないから、軽く頭に手をぽんっと乗せることしかできなかった。なのに、それだけなのにアイツは、嬉しそうにはにかんだ。
俺には出来無い、感情のまま表情を変えること。


俺はアイツが、雅が羨ましいと思う。








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