はつらい | ナノ
石田くん、と教えられた名前を復唱してみてそれから、うん、と首を縦に振った。私なりの確認の儀式である。石田くんも満足げに微笑んで頷いた。よろしく、と小さな声で挨拶した。のほほん、とお花に囲まれたかのような私達の空気にかみおくんがぎゃーぎゃー横入りしてきた。ちょっとイラッとして睨むけど本人は全く気づいていない。
「え、石田知ってんの?!俺知らないんだけど!」
「なに言ってんだよ神尾、入学式に来てただろ」
私に気を使ってかあえて不登校、と言う単語を使わずに遠回しに言ってくれた。石田くんはつくづく優しい少年だ。
そんなこと言われても一向にわからないかみおくんははぁ?と声を裏返して必死に頭を回転させる。深司が、神尾は馬鹿だからわかんないといったので更にムキになったかみおくんが頭を振りながら考えていた。が、結果。
「わっかんねぇぇぇ!」
「ばかみおつ」
「繋げんな!」
深司が上手くまとめて深く帽子を被った男の子がケラケラ笑う。そして周りからばかみおつばかみおつと言われて完璧凹んだかみおくんは名字ー!と抱きついてきた。抱きついて・・・抱き・・・・・・
「ひっ!」
反射的に深司に抱きつく。突然のことに吃驚する深司だが冷静に対処してくれてかみおくんをべりっと剥がしてくれた。
「神尾・・・・・・」
「ひっ・・・し、深司・・・!」
まだ死にたくないとでも言うような声を出すかみおくんの断末魔が聞こえた。
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