「部長の橘だ、よろしく」
す・・・っと差し出された左手に戸惑う。右手を少し伸ばすがその手には上手く触れられずに掌を閉じたり開いたり。その辺をさ迷う私の右手を深司の手が掴み橘さんの左手に重ねる。バッと深司を見ていると重なっていた手が温もりに包まれた。次はそちらに視線を向ければ口元を少し緩ませた橘さんがいた。
「名前、握手の仕方ぐらいわかるでしょ」
「う、ん」
深司が頭をぽんぽん、と撫でてほら、と声を掛ける。温もりに包まれている右手に優しく力を入れて握り返す。よし、と橘さんが声を上げてゆっくりとその手を離した。少しぽかん、としている私は手を仕舞えずにいた。すると取り残された私の手を今度は誰か握った。その反動ではっと意識を戻して前をみればにっこり笑った頭にタオルを巻いた人。腰を折って私に視線を合わせてくれていた。
「名字名前さん、だよね。俺、同じクラスの石田鉄。よろしくな」
優しい声色で私に話掛けた。
▼橘さんはあのイケメン橘さんとゴリラの橘さんしか出てこない。(←※テニミュネタ)
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