帰らないの?と優しい声色で訪ねられたのでなんとなく、はい、と答えてみた。が、よくよく考えると自分はもうすでに帰ってもいい時間だったので、あー、いや、と曖昧に補足をした。相変わらず何を考えているかわからない不二君はふぅんと言ってまた前を向いた。
放課後の教室、特に意味なんてないけど残ってぼーっと黄昏てみた。気づけばいつのまにか隣には不二君が座っていて夕焼けを見て綺麗だね、と同意を求められたのでそうですねぇ、とただただ前を向いて返事をする。不二君がいつのまにか隣にいた、というのにはあまり違和感を感じなく寧ろ、最初っからいたかのような感じだった。

「不二君、」
「ん?」
「部活は・・・」
「終わったよ」
「あ、そうですか・・・」
「うん」
「あの、」
「なーに」
「不二君は、帰らないんですか」

ただひたすら隣にいるだけの不二君に目線を向けずに質問してみた。私は前を向いているから不二君がどんな表情をしているのかはわからないけど多少の沈黙のあと、クスッと笑った気がした。

「帰らないよ」

私と同じ姿勢で不二君が回答をする。何でですか、なんてそこまで聞くのはおこがましいと思い、そうなんですかぁ、と返しておいた。それ以上聞く気はないんだ、とまたもや不二君がクスッと笑った(気がした)

「じゃぁ、一応聞きます」
「あ、聞くんだ」
「ダメでしたか」
「そんなことはないよ、たぶん」
「はぁ・・・、どうして帰らないんですか」
「・・・・・・・・・君が帰らないから?」
「溜めましたね、しかも疑問系」
「え、あぁ、ごめん」

かたん、と隣で音がして何十分ぶりに首を動かすと鞄を手にした不二君が立っている。おやまぁ、と口からこぼれた言葉にあ、と声をあげ口を押さえた。不二君はくつくつと笑っていて、さぁ帰るよ、と言わんばかりに私の鞄を差し出してくる。どうやら今日の帰りは寂しくないようだ




曖昧バンチュール









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