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少し離れて岩場に隠れた。泣きたいわけじゃないのに涙が出てくる。記憶がないなんて、普通の人から見たらおかしいよね、そりゃそうだよね、なんて自分に言い聞かせる。どうやら自身で思っていたよりもはるかにさくらちゃんの言葉が刺さったみたいだった。
「栞ちゃん・・・っ」
地面に座り込んでひたすら泣いていると、頭上から声がした。顔をあげると、みさきさんとあゆみちゃんだった。どうしてここがわかったの?と泣きながら聞いたら、愛のセンサーだ!なんてあゆみちゃんがおちゃらけて頭を撫でてくれた。すこし、おちつく
「ごめんね、さくらちゃんが」
「夏樹の親父さんが今きつく叱ってるから、な」
こくん、と頷いてごめんなさいと謝るとあゆみちゃんとみさきさんはきょとんとしていた。
「私、無意識のうちにさくらちゃんを傷つけたのかもしれないから」
「でも今は、栞の方が傷ついてるだろ?」
無理しなくていい
お兄さんみたいな存在のあゆみちゃん。優しく、あやすように慰めてくれて、家族でも何でもない私に優しくしてくれる。みさきさんもお姉さんみたいで。嬉しくて嬉しくて、家族がいない私には、願ったり叶ったりなことなのに。それ以上、望んではいけないと思った。
あゆみちゃんが夏樹を呼んでくれて、私は夏樹と一緒にマンションに帰ることになった。
「ごめんな、さくらが・・・」「いいよ、気にしてない」
「嘘つくなよ、目、腫れてる」
手を繋いで歩く足を止めて、夏樹の左手が私の右目を撫でた。くすぐったくて肩をすくめれば、優しく抱き寄せられた。
「辛かったら、泣いてもいい」
「・・・・・・、」
「苦しかったら、嘆いてもいい」
「・・・っ」
「俺の胸で泣いていいから」
だから、我慢するなよ
嗚呼、涙腺崩壊
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