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さくらちゃんに睨まれる理由がわからなくてずっと考えていたら、急にさくらちゃんが泣き出して夏樹に抱きついた。皆、どうした?なんかあったのかさくら、と寄っていくもんだから私は一人、離れて見ていた。ぐすんぐすんと泣いた後にあゆみちゃんが、誰に泣かされた?と尋ねたらさくらちゃんはあの人、と私を指差した。・・・え、わた、し?
その場にいる全員の目がさくらちゃんから私に移る。あれ、なんだろう、この感じ。前、にも味わったことあるよう、な。きっときっと昔のこと、思い出せなくて頭を抱えしゃがみこむ。夏樹が直ぐに近寄ってきてくれて支えてくれた。頭がずきずきする。ぐらぐらする

「あ、・・・あ、」
「栞・・・?」

発狂しそうになるのを必死で抑える。口に手を当てて、声を出さないように。夏樹のお父さんがさくらちゃんに、栞ちゃんがなにした、なにもしてないだろう。っていってくれた。確かに私、なにもしてない。でももしかしたら気づかないうちにさくらちゃんを傷つけたのかも、しれない。
さくらちゃんがまた口を開いて喋り出す。つらつら、つらつらと

「またそうやって、お兄ちゃんのこと騙すんだ。あの人いっつもそう、お兄ちゃんのこと騙して、さくらからお兄ちゃんとっちゃってくの」
「さくら・・・っ」
「記憶がないとか、嘘。きっとお兄ちゃんを近くに置いておくためなの」
「さくら、やめろ」
「今のだって、演技なんだ。さくらからお兄ちゃんを離すためにっ」
「いい加減にしろ!さくら!」


夏樹が私を離してさくらちゃんの元へ向かう。そして勢いよく右手を振り上げて・・・っ

「夏樹!」
「栞・・・」

ビンタをしようとする夏樹の右手を名前を呼んで止めた。叩かれると思っていたさくらちゃんはぎゅっと目を閉じていた。周りがまた少しどよめく

「私、大丈夫だから」
「私、平気だから」
「だから私、帰るね」

ごちそうさまでした、と頭を下げてその場を後にする。後ろから聞こえる夏樹の声は、耳にいれないで




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テーマ「人外ファンタジー」
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