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コンコン、とノックする音が聞こえて玄関の扉を開ける。迎えに来た夏樹にちょっと待ってと言って奥の部屋の電気を消した。
部屋の鍵を掛けて、確認のためドアノブを捻る。ガチャガチャと音がなるのを聞いて夏樹と二人でマンションの外に出た。夏樹は自転車で来ていて、2ケツしよ!2ケツ!とはしゃいだらしょうがないなと言う顔をして後ろに乗せてくれた。夏樹の腹周りに腕を回して抱きつく。ぎゅっと力強く抱きついていたら重たいと言われた。

「ひどい」
「酷くない。あと苦しい。お前は俺を殺す気か」

滅相もございませんわ、なんて笑っていたら、そういえばさ、と夏樹が話を急に変えてきた。

「電話のときもそうだったけど、声枯れてる。なにかあったのか?」

体が大袈裟に揺れた。幸い地面の突起で自転車が揺れたため気づかれなかったけれど。まさかそんなにわかりやすいぐらいに声、枯れていただろうか。目だって、さっき鏡で見たときはよくよく見ないと赤いってわからない程度だったし。
そんなことないよ、なんて俯いて嘘で誤魔化して、ああ、声が上擦ってしまった。
夏樹がチラリと私を見る。そうか、とまた前を向いてより速く自転車を漕いだ。周りは少しずつ、暗くなってきていた。




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