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それは釣りにいった帰りで、夏樹は珍しく大漁に釣って喜んでいた。よかったねぇ、と他愛もない会話をしながら手を繋いで歩く。途中、友人数名を見掛けたがそこは見て見ぬふり、私たちは学校でも有名なばかっぷるだから二人でいたらたいてい誰もあまり話しかけてこない。
会話がなくなって、もう秋だね、と私が言えば、あぁ、と短い返事。二人でコンクリートを蹴る音が海の波の音に消えた。





「もう、大丈夫か?」

足を止めた夏樹が真剣な顔で私を見た。もう、大丈夫か、の意味はわかっている。それでもそれを認めたくないから俯いて、なにが?と上擦った声で答える。わかってるくせに、と言う夏樹の言葉は私の胸に刺さる。繋がっていた手を解いて夏樹が一人で歩きだすがすかさず手を伸ばして腕を掴んだ。ぱしっと音がなり、それと同時に夏樹が振りかえる。

「栞は、どうしたい。」
「夏樹と、一緒にいたい・・・っ」
「なら、一緒にいればいい」
「でき、ない。」

大丈夫か?の意味は、さくらちゃんに言われた言葉をもう気にしていないか?と言う意味。今日釣りに釣れていってくれたのは、私を立ち直らせるため。私は知らないうちにへこんでいて、さくらちゃんを恨んでいた。私の夏樹なのに、なんで?妹だから?ねぇ。そんな思いがここ最近、ぐるぐると渦巻いていていつもの私じゃなくなるのが怖かった。きっと、いつもの私じゃなくなれば皆私を嫌う。そう、夏樹でさえ。
たぶん夏樹は今の私の気持ちに気づいていた。だから、最近頻繁に会いに来てくれたし、泊まりに来てくれた。あぁ、私、夏樹がいないとダメんなんだ。

「出来る。」
「出来な・・・」

私の言葉は、夏樹に飲み込まれた


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