未来
放課後、ほしいものを正臣に聞いた
『なに、欲しい?』
「なんでもいいよ」
またなげやりな答えだった。つきあって初めての誕生日、だからこそプレゼントをあげたかった。なのに正臣はへらりと笑っては流して、帰ろうか、と手を握って引いていく。ぱし、っと正臣の手を振りほどいた。少々驚いた表情の正臣はすぐにまた、いつものなんだか胡散臭い笑顔に戻った。みんなの前ではにっこにこの笑顔なのに、私の前では胡散臭い笑顔。本当の自分を私だけに見せてくれている気がして、嬉しかった。・・・・・・おっと、話がずれた。
振りほどいた手をぎゅっと握って、ほしいもの、いってくれるまで動かないから。なんて意地でも言わせたかった。
正臣は、そっかぁ俺は帰るよ?と前を向いて歩き出した。
自分でもばかだなぁと思った。たかだ誕生日プレゼントごときで。今思えば正臣はなにもほしくなかったんじゃないか、そう考えた。なにがほしいものいってくれるまで動かないから、だ。でも言ってしまったからには動くわけにはいかない。私のプライドが許さない。ああそうさ。
動かないから、と言ったなまえを置いて家に帰ってきた。なまえもバカじゃないのだから、そのうち帰るだろう。そう考えていた。俺が、バカだった。あの変にプライドが高いなまえが動くわけないじゃないか。抜かった。でも、俺がほしいものはそう簡単に手に入るものじゃない。だから、言えなかった。
21時頃、谷田部から連絡が入った。
【すいません!こんな時間に・・・実は、】
「・・・っなまえ!」
飛ばして飛ばして、なまえのところへと駆けていく。足が途中でもたれそうになる。なんとか持ち直して、流れる汗をぬぐいながら走った。
放課後、なまえと別れた場所につけば、道の真ん中にぺたりと座り込んでいるなまえを発見した。
「なまえ!」
『あ、正臣』
ほっとした表情を浮かべるなまえとは裏腹、俺は眉間にシワを寄せなまえを怒鳴り付けた
「なんで!こんなところにずっといたんだよ!カラーギャングに絡まれたら!・・・っ、今回は、偶々谷田部が近くを通ったかいい、けど。」
『ごめん、なさい。』
ショボくれて謝るなまえを抱き締めては、よかった。と呟いた。
『ねぇ正臣、』
「ん・・・?」
『なに、欲しい?』
「俺は・・・・・・」
君の未来が、欲しいよ。
いいよ、いくらでも、いつでもあげる。
正臣はぴば!
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