雨の、いつもの帰り道。人気の少ない道を一人通っていれば、目の前に傘を投げ捨てうずくまっている柚子がいた。よく見れば、肩が微かに震えている。寒いのか、はたまた泣いているのか。この暑い江ノ島で寒いはない、か。ただ蒸し暑いだけだ。

「どうした?」

自分の持っている傘を柚子に当ててやる。ぐすっと鼻を鳴らして、夏樹、と俺の名前を呼んで振り返った。大分泣いていたのか、目が結構赤かった。ふっと視線を足元にやれば、膝に傷があった。あぁ、そう言うことか

「立って、」

ぐいっと柚子の二の腕を引っ張りあげて立たせる。傘を持たせると今度は俺がしゃがんだ。意味不明な顔をしている柚子をよそに


痛い痛いの飛んでけ、と俺は泣いている君の膝に××をした。


(夏樹、それセクハラだよ)
(うるさい、)






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