昔むかし。

 有る国の3月2日に、ピカピカと光るような王子が生まれました。
が、両親共に金髪で、巻き眉毛もこの国では、さほど珍しくはなかったので極普通に『サンジ』と名付けられ、すくすくと細めに育ちました。

 それから約一年が過ぎる頃11月11日。また別の国にもコケ頭の王子が生まれました。
この国もまた、そんな外見の人は沢山居たので『ゾロ』と名付けられた王子も、極普通にムキムキと育ちました。

 ゾロは文字通り上の世界を目指しましたが、なぜか途中から息が出来なくなり気を失ってしまいました。
そこに居たのが友人のルフィと共に魚釣りをしに来たサンジでした。
「うわッ!! なんだソレ!!」
 ルフィが持ってきたソレは、とてもムキムキした大きな魚でした。
「ししし!! 食いごたえ有りそー!!」
「本気で食う気か!?」
その巨魚は、サンジには見過ごす事の出来ない物がくっついていました。人の、上半身。
その魚は人魚でした。
「おう!! オレはいつだって本気だ!!」
元気良く応えたルフィを、サンジはゲンナリして拒否しました。
「おれには……こんな気持ち悪ィモン捌けねェ……」
「け〜ち〜!!」
 ルフィはダダをこねますが、サンジは魚と目を合わせないように視線を逸らして早口で
「何年か後に喰った方が、もっと食いごたえ有るだろ!!」
(二度と会いたく無ェ!!)と思いつつ言いました。
「それもそうか」
納得したルフィが人魚を持ち上げると、彼は目を開けました。

 人魚・ゾロには目に痛いくらいの日光の中、ますます目が痛くなるようなサンジの金髪が光っていました。
ゾロは何故か、(このキラキラした奴が救ってくれたのか)と思いました。
 ゾロは海に帰ってからも、あの『キラキラした奴』を忘れられませんでした。
ちょくちょくキラキラの様子を見に行きつつ思いました。
(何とか上に行けないモンか)
(おれ達とは違う下半身だったな)

 ゾロは、家族から『行ってはいけない』と言い聞かされていた魔女の家に嫌々行きました。
そこには金にがめついナミという魔女が居ました。
「へ〜? アンタ人間になりたいの」
企み顔でナミは言い、怪しい薬を調合しました。
「ちゃんと代金は払えるんでしょうね? 仮にも王子なんだし」
 ところがゾロには持ち合わせが有りませんでした。
「しょうがないわね!! じゃあ、代わりにその声を貰うわ」
冗舌では無いゾロは(別にイイか)と頷きました。
ナミから貰った薬を一息に飲んでからゾロは思いました。
(あの魔女、おれの声何に使う気なんだ?)
突然襲い掛かる眩暈に頭がグラグラしながらも、ゾロは上を目指して泳ぎました。


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