カカシ、任務へついていく

「隊長!!例の遊郭に闇の武器商がとまりこんでいるらしいです。しかし・・・」
仮面をつけていても困惑しているのがありありとわかる暗部に、ナルトはため息をもらす
「おい・・・暗部が平常心を忘れるなんてどういうことだ・・・。その件はこちらでなんとかしよう。」
変化をしているにもかかわらず金色の髪を隠すことなくさらけ出している暗部総隊長ことナルトは、仮面の中で静かにため息を吐いた。
(・・・あの武器商人はつっこまれる側なんだよなぁ・・・)
なんてことを考えつつ、今回の任務をあてる忍を考える・・・
「なぁカカシ・・・」
すぐそばで控えているカカシに声をかければ、音もなく隣に立って任務のかかれた帳簿を見る
『任務:武器商グループの掃討
 任務ランク:S』
簡潔に書かれた内容に、カカシが思案する
「で、どうやるの?」
「武器商人が男娼にハマっててな・・・そこからききだそうとおもったんだが・・・どうもネコのほうらしい。しかも、しっかりがっしりムキムキが好きみたいで、どうすっか考え中なんだ・・・」
ナルトがため息を吐きながら、そっとカカシノ顔をうかがい見る
「俺ぜったいいやだ!!ナルト以外に突っ込みたくないし、起たない!むしろそういうの専門かって言いたくなるくらい志願してくるガチムチなアニキ共をつぎ込めばいいじゃん!!」
まったくもって暗部としての品格なんてないものの言い方にナルトは額を抑えて嘆かわしげに見下す・・・
「もういい・・・拷問にでもかけたほうが楽だ・・・」
そういって、ナルトはさっさと暗部の執務室から出ていった・・・
「な・・・ナルト〜!!!俺も行くよ〜!!!」
カカシが追いかけていくのも気にせず全速力で件の遊郭のある場所へ走る。
ナルトの本気な速度がカカシにいかにナルトが怒っているのかをうかがわせる・・・
カカシほどの修羅場をくぐってきた男でも一定の距離以上には近寄れない絶対的な圧力。きっと今のナルトに睨まれてしまえば、カカシとてなんでもしゃべってしまうだろう。



「ギャー!!」
カカシが遊郭についたころには、相当な数のゴロツキが倒れ伏して泡を吹いていた。
仮面越しにもわかる怒気とまがまがしいまでのチャクラ。
ナルトが首根っこを掴んで持ち上げている武器商は、ナルトに敵の数から場所からすべて喋っている。それも、コワレタように繰り返し・・・恐怖以外の何物でもない衝動に突き動かされて、しゃべらざるをえないのである。鍛錬を積んだカカシでえすら恐怖するモノに、ちょっと強面の武器商がかなうはずもない。
『ドン』
無言で武器商を床に落としたナルトが、一瞬にしてきえた。
カカシにこの場をまかせるためにカカシが来るまで待っていたのであろう。
部屋の外のゴロツキを縛って寝かせ、ナルトから解放された武器商も縛り上げる。里の中枢へ忍犬を向かわせて、火影様に頼んで暗部をこちらに向かわせたから、カカシは一息つきつつ、周囲を見渡す。
そこで震えているのは、ナルト程の年の少年
「君、ここではたらいてるの?」
「はい。僕はここに売られました」
目が死んだように暗くて、すべてをあきらめてしまった顔。
「ここは長いの?」
「いいえ。今日、母さんにここに連れてこられました」
「じゃ、逃げなさい?ここから逃がしてあげる。君はさっきの武器商に殺されたことにしてあげる。ここから逃げて、里の一番奥にある大きな屋敷の門の前にいなさい。俺と俺の恋人の家だから、逃がしてあげる」
カカシは己がしようとしていることに戸惑いつつ、よどみなく話していく。
この少年とナルトを重ねてしまっていることに気づいている。
ただ、強くなるしかなかったナルト。
だれからも愛されることなく、己の背負わされた宿命から逃れる術を与えられなかったナルト。
そんなナルトと重ねたこの少年だけでも、カカシは助けたかった。
ナルトはきっともう逃げるなんてことはできないから。
背負ってしまった運命に食われ、宿命を飲み込んで生きていく修羅と化しているナルトはもう、己と共に生きることを選んでくれたから、逃がすなんてしてあげられない。
カカシは、ほほ笑むとそっと少年を窓から逃がす。
「この道をただまっすぐに進んで?振り返らずに、忍犬を貸してあげるから、この子についていきなさい」
そういって、召喚した忍犬に促されて、少年は闇に消えた。
「この遊郭もアクドイ商売なのカナ?しょうがないねぇ・・・」
ようやく到着した暗部に場を引き渡してカカシはナルトを追う。



「ぎゃーーーー!!!!!」
ナルトの居場所はすぐに分かった。武器商人と思しき男がナルトに片足をもたれた状態で高い窓からぶら下がっていた。
「・・・隊長。なにやってるんですか?」
一応は捕縛対象の武器商人の前でナルトなんて名前で呼ぶことはできないから、隊長だけにとどめたのに、突然武器商人が震えあがった
「・・・ま・・・まさか・・・暗部の・・・そう・・・たいちょ・・・」
そうだとばかりにナルトが月に映えるように己の狐面を見せつければ、武器商はサラサラと喋り出した・・・最後に
「殺さないで・・・俺の家族だけは・・・」
なんて、付け加えて気を失った。あんなところで男を買ってる奴が家族なんて、笑えるね。武器商として捕まったが最後、きっと家族を良くて里を追われる。悪ければ・・・きっと男が想像した最悪のシナリオが待っている。
「カカシ。こいつの家族を調べろ。なにか知っているようなら消せ。俺の命令だ。」
ナルトはいつも殺しの時はこうやって「俺の命令だ」っていう。俺の命令で仕方なくやったんだって、俺たち部下の逃げ場を作る。そして、己が修羅になっていく。ナルトは運命を噛み砕いて飲み込んで受け入れてる。残酷だという意識もなく、ただ当然のように飲み込んでるのが、俺には悲しい。けど、俺は逃がしてあげられないからナルトへの愛と誠意をもって任務を全うする。俺の責任で、俺の一存で。


なんとなくうっすら知っていた家族連中にこっそりと男のしていたことは犯罪で、もう会うことはできないと告げ、路銀と地図を渡して里外へ逃がした。きっとナルトは死を望んではいないから。この家族が里を恨むことがないように言いくるめて精いっぱいの演技で里から逃がして、屋敷を派手に燃やして痕跡を消す。
武器の組織の連中に殺されたかのように偽装をして、すべてをなかったことにする。

「ナルト・・・片付いたよ?」
執務室で俺を待っていたナルトに正直に事の次第を話したらナルトがうっすら笑った。
「アリガト」
消えそうな小さな声に俺は聞こえなかったフリをしていつものようにふるまうんだ
「さ!!二人で帰ろう?愛の巣へ?」
冗談めかして軽く言った言葉にナルトが笑った。
さ、さっさと帰って二人で寝よう!!

 FIN?

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