助けを呼ぶ声4

押さえてる手をそっとはずして、傷を見てみればもうふっくらと盛り上がった皮膚があるだけでこれ以上の出血とかはないだろうっておもえて、俺はとりあえず一心地ついた。
気を失ったナルトの服をそっと脱がせて、全身の傷を確認する。
改めて見るナルトの体はすごくいびつになってた。
細くて肉のない腹。
全身をくまなくはしる切り傷、刺し傷。
隙間なくあるアザのヒドイこと・・・
「ごめん・・・」
俺は、眠るナルトに謝るしかできなかった。そんな現状をみても俺にはなんにもしてあげられなくて、ひどい後悔と自己嫌悪で吐き気を催すくらいだった。
壊れた俺のすべてを受け入れて、いつも俺が家に呼ぶと、殴られるのもわかってるのにきてくれてたんだね。
俺のすべてをうけいれて、俺の壊れた部分を引き受けてくれてたんだね。
でも、きっと受け皿は限界があって、限界を超えて俺の負の部分を受け入れてばコワれちゃうのは当たり前だよね・・・
なんで、俺は気付けなかったんだろう。
こんなに細くなってこんなに傷だらけになって・・・あんなに俺が守るって決めてた大事な宝物だったのに・・・いや。宝モノなのに・・・
「ごめん・・・」
俺は上忍で、知識はたくさんもってるはずなのに、どうしていいかわからない。
「ごめん・・・」
意識のないナルトにただただ謝るしかできなかった。
「どうして謝るんだってば?コレは普通の事だってば」
目を開けたナルトがこっちを見つめてくる。その瞳は俺の知ってるキレイな目じゃなくて、曇ってて濁っててどこをみてるのかわからなくて、うつろなガラス玉みたいだった。その目がさまよったと思ったら、ナルトの影分身がナルトのクナイを拾う。
「刺すだけじゃ足りなかったら、切り裂くってばよ?じゃないと回復しちゃうってば」
影分身はナルトのはずなのに、ナルト本体を切り裂けと嗤う。RPGの敵を倒すときに言うような感じで軽く言ってくる。
「ナルトを助けたいんだ。もう大丈夫だよ?俺はもうナルトを傷つけないよ。」
ほほ笑んで、ナルトの手からクナイを奪って、そっと自分のホルスターにしまう。ナルトの手の届かない場所へ・・・
「カカシせんせー。ついに狂ったってば?俺を助ける?俺を助けてくれるなら、俺を殺すってば。」
どんなにどんなに真摯に告げても見つめても、
俺の言葉は、視線はナルトに届かない。
こんなに近くで触れ合っているのに、俺とナルトは遠くにいるんだ・・・


つづく

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