助けを呼ぶ声3

血に濡れた手でクナイを俺に渡して、もう一回抱きつこうとするナルトを遠ざける。
「?」
ナルトはいつものように小首を傾げてくる。
「あぁ・・・傷が治っちゃうってばよ?早く刺さないと・・・」
そういって、自分のクナイをそっと握る。
『キィン』
俺が反射的にたたき落とさなかったらきっとナルトは自分で刺してたと思う。
そこで初めて直視したナルトの体は真っ赤に染まってた。
真っ赤に染まってて、人だって主張するみたいに、真っ赤になってる。俺に向かって、ナルトが声もなく自分は人だって。人間だよって俺に言ってるみたいで。
俺はわかってるよって、さっきナルトがぶつかって・・・俺が蹴ったからぶつかってあいたクローゼットから落ちてきたタオルをあてがってみた。
「なにしてるの?」
ナルトが真剣な顔でいぶかしんできた。
「血、止めなきゃ」
「やめて!!!」
いままで静かに話してたナルトが怒る。
「そんなことしたら助かっちゃう!!九尾の力が間に合わないくらいに刺してくれないと死ねないよ!!ダメだってばよ!早く刺さなくちゃ!」
そういって、俺の手をどけようとしてくるから、気づくよね・・・
「ごめん・・・俺狂ってた・・・」
つぶやいた言葉をナルトは聞き逃さなかった。
「違うってば。だって、里の大人はみんな俺を殴ったり蹴ったりするってば。みんなするんだから、それが普通なんだってば。今までがきっと狂ってたんだ。俺ってばカカシ先生を・・・えへへ・・・」
あぁ・・・俺、何してんだよ。自分でナルトが俺を信じてくれようとしてることに気づいて、俺はナルトに信じてもらえるようにしてたのに。どこで狂った?
あんなに信じてほしいと思ってたのに。
あんなに大切にしようと思ってたのに。
あんなに守ろうと思ってたのに・・・
「ナルト・・・ごめん。俺が狂ってたんだよ・・・」
ナルトの傷を抑えて、こんな時は都合よく九尾が治してくれることを祈っちゃう俺って汚いよね。
服の上からだと隙間があってそこから血が出ちゃうから、ナルトの服を脱がす。
だんだん黙ってされるがままになって、ナルトが
「殺してくれないならほっといて?」
冷めた目で俺を見つめて俺の手から抜け出そうとする。
「これ以上・・・まだ殴りたりないってば?俺を生かしておいたほうがまだ殴れるとか思ってる?残念だってばねぇ?俺ってばもう決めたんだってば・・・」
にやっと口角を片方だけあげて笑ったナルトがなんだかあきらめたような自嘲を含んでる。
「違うよ!!俺はナルトに助かってほしいんだよ!!俺は狂ってたけど、もうもとに戻ったから!!今度はナルトを守るんだから」
俺の言葉に、ナルトは嗤う
「アハハハ・・・そうやってまた俺を信用させて、また蹴るんだろ?俺ってばもうだまされないって・・・よ・・・」
ナルトがついに意識を手放した。
倒れたナルトを受け止めて、その服を脱がせて止血する。止血していれば九尾の力で助けられると思う。現にナルトの傷はふさがっていってるし、実際には傷はほぼふさがってる。今日の傷は・・・
おれが日々付け続けてきた傷が治ることなくジュクジュクしている場所もある。
俺が付けてしまった傷のほかにも、たくさんの傷がある。
角度とか、場所からして、おそらくナルトが自分で死のうとした痕なんだと思う。
俺、なにしてたんだろう・・・
ナルトを見てなかった。
ナルトの中にいる九尾はナルトとは別の存在で、ナルトはナルトだって、自分で思ってたのに、ナルトが俺を信じてくれるようにって、毎日ナルトの頭を撫でて笑いかけてきたのに、ちょっとした疲れと、ちょっとしたゆがんだ思考が、ナルトをコワした。
ごめんね・・・ごめん。
ナルトはちゃんと人間だよ。
ナルトはナルトだよ。
そっとナルトの体中の傷を治るようにっておもいながらタオルで押さえる。
ナルト・・・
お前の言葉をきかせて。
大丈夫。
今度は間違えないよ。
里で言われてるように、今度は本物のバカップルになろうね?



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