夏の残り香

私の爪は透き通る空の色。
私の髪は太陽みたいなきらきらの金髪。
夏の名残りが、私を責める。


私はとある里の忍。
今は旅館で働く女中に化けて、とある忍を落とすべく任務に就いている。
その忍は、火の国にある木の葉という里の上忍であり、木の葉の長である火影の右腕の男。
木の葉という里は、美しい金髪の青年は火影を務める絆を重んじる里であり、その長たる金髪の青年は九尾の妖狐を腹に宿すという・・・
そして、その青年の強さは半端じゃなくて、正攻法ではどうあっても勝てないが、血系限界や、秘術を多く持つ木の葉は魅力的であり、今回は任務でこちらに来るという情報をもとに、なんとか里のナンバー2の泊る旅館に女中として潜入して、なんとかこの男を落として情報を得るのが、私の任務。
さぁ、もうすぐその男がこの宿に来る。ここからが私の任務。
「こんにちはぁ」
来た・・・
その瞬間に目を奪われた。
綺麗に整えられた指先から
隠されていないほうの瞳から
散切り頭の綺麗な銀髪から
目が離せない。
ぎこちない動きで、荷物を受け取って部屋に運ぶ。
「ごゆっくり」
頭を下げてひとまず下がる。
そぅっと気配を消して近づいてみると、部屋のいたる所を調べている。どこをどのようにすれば聞き耳が立てられることがないか熟知した洗練された忍の動きを見ながら、その姿に見惚れる。
そこで、気配を出してしまった。
『コンコン』
仕方なくノックして、ドアを開ける
「失礼します。お夕食はこちらで召し上がりますか?それとも食堂でお召し上がりになりますか?」
ニコリと微笑めば、彼もニコリと笑ってくれる。
「部屋で」
「かしこましました・・・あの・・・あの・・・好きな色はなんですか?」
他愛のない会話から始める。無垢な女の子から始める。信用を勝ち取ること。裏を見せないこと。常に表情をなくさないこと。感情を捨てること。この任務の鉄則。
「ん〜・・・君の髪みたいな・・・太陽みたいな金色とか、空みたいな青とか・・・」



私は次の日、足の爪を青に染めた。
普段は隠れていても、どこででも出しようはある。
「あの・・・一緒に花火でもみませんか?」
いきなりさそったらへんかしら?でも、いいわ。任務。そうよ・・・任務のためよ。
「いいね。じゃ、今夜仕事が終わったら教えて?」
そういって、その場をあとにして、私は仕事に戻る。
彼は彼でどこかにでかけた・・・普段着であることと、気配を絶たずに歩いていることに私的要件の外出と考えた私は、尾行をつけずに普段のように仕事をして、普段のように出迎えた。
「あの・・・6時におわらせてもらえそうです・・・」
帰ってきた彼に手短に伝えたら、にこっと笑ってくれた。
「わかった。じゃ、準備もあるだろうから、7時にロビーね?」
簡潔に言って部屋に戻ってしまった彼の手には、きれいな青の手提げ袋。
この近辺でとれる最高級の貝殻を使った装飾品の店の袋・・・



7時
勝負の時間になったから、私は浴衣に着替えて、下駄をはく。
下駄の鼻緒は少し切れ目を入れて加工した・・・時にはそういう全くの素人じみた行動も必要よね。任務。そう。任務なんだもの・・・
ロビーで待っていたら、彼は昼間に見た青の袋を下げてやってきた。
あぁ・・・私へのプレゼントだったのね。

『ピュー・・・ドーン』
なんでかしらね?
毎年里で見ている星空の中の花火より、雑踏の中の今年の」花火のほうが数倍きれい・・・隣にいる彼がそっと私の手を握る
任務・・・
にんむ・・・
ニンム・・・
あぁ・・・



祭りのおわり
「はいコレ」
そういって渡されたのはきれいな光沢ある飾りのついたネックレス。
「ありがとうございます!!こんなきれいなの・・・もらっていいんですか!?」
「いいよ。そのかわり・・・


俺の里には手を出すなって上層部に伝えなさい。」


・・・ドウシテ?
ナンデ?

「なんでばれたのかって?君の変化は出会った瞬間におかしいと気づいたよ。
それに君の手にはアカギレはないし、手を握ったらクナイヲもつときに触る部分の皮膚が若干固かった」

あぁ・・・最初からわかっていたのね。
「・・・里に・・・火影様に仇をなさないのであれば、木の葉は同盟に応じよう。君にも、俺をあげるよ?ただし、体だけね?心は今この瞬間でも木の葉に、火影様とともにあるから。」
優しげに、私の髪をなでた彼の顔はどこかさみしそうで、私はそっと、
「里に帰って報告します。木の葉は堕ちない・・・と。同盟についても協議します。貴方も要りません。でも・・・でも!だから・・・だから、このネックレスをください・・・」
顔なんて見れなかった。
私の精いっぱいの本心を伝えてみたら、彼は笑ってくれた
「そのネックレスは君のだよ。忍の認証番号も店に行って頼めば入れてもらえるように手配してあるから、行ってごらん。俺はもう要件はすんだから、里に帰るよ。」
そう言って彼は翌日早くに帰って行った。
来る時には持っていなかった青の小包を大事そうに抱えて・・・


その後、私の里が木の葉との同盟を成したのは、冬の先駆けの寒い時期。
同盟式典で見た火影様の髪は、私の紙よりもずっとキレイな金髪で、私の爪よりずっと澄んだ青で、その隣に並ぶ彼は、とても優しく笑っていた。
二人の手甲の隙間から見える指に光るのは、私のネックレスよりずっと輝く・・・
あれほど欲したモノは、彼の中ではついでだったのね・・・



貴方の欲したモノは、あなたの隣にあって、貴方が常にそばにいたのね・・・
私が出会った貴方は心のないあなた。
それでも、私には貴方・・・


そんな中でも私の足の爪は夏の空のような青・・・


   FIN



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