願いがもしもかなうなら4

ナルトの瞼が、ゆっくり、だけど確実に開いていく。俺の鼓動がすっごく早くてうるさい。
「ナルト!!」
俺の声に、ナルトが反応する。
「・・・か・・・かし・・・せんせ・・・」
ずっとしゃべってなかったから、声が出なくて、それでもナルトが俺の名を呼んだ。こんなに嬉しい事ってない。でも・・・
「クソ・・・」
吐き捨てるように言って、ナルトが天井を見上げた。その目が俺の知っているきれいな透き通った空色じゃないことに、俺は驚いてかなしくなった。ナルトの目は濁っていて、狂気をはらんだくらい色をしていた。いつからだろう。こんなにもナルトがひきつった顔をしていたのは。どうして気付かずにほっといたんだろう。こんなにも傷ついて、こんなにも病んでしまった最愛の宝物。
「ナルト・・・」
俺がもう一度呼べば、ナルトは取り繕うように笑う。その目はさっきのくらい印象を打ち消すかのように明るい光彩を放っていた。きっとこれがナルトの護身術なんだと思う。きっと、これに俺もだまされたんだとは思う。でも、注意深く見ていればきっと気づくことができた。よくよくみれば、ナルトが自身で付けた傷は見えるか見えないかの位置にある。きっと、気づいてほしかったんだね?ごめん・・・
「カカシ先生?どうしたんだってば?こんな時間まで・・・」
いつも俺が追い返してた時間はとうに過ぎている。
「ナルトがそんな状態じゃ、置いてけないよ」
あかるくふるまえば、ナルトはなんとも俺の顔色をうかがってるの丸出しの笑顔で
「カカシ先生。俺ってば大丈夫だから、上忍師は大変だってばねぇ?」
ナルトは、俺と恋人とか、そういった事は口に出さない。きっと、俺の機嫌を損ねるとでも思ってるのかもしれない。
「ねぇ、ナルト。俺さ、ナルトが大好きだよ?今まではナルトはいつでも側にいてくれるんだって勘違いして、ナルトを困らせてた。でも、今回の事で気付いたんだ。俺にはナルトしかいらない。」
ほほ笑んで見ても反応がない。なんか、すっごいひくついてる右の頬が、なんともきまずい。ナルトの頬が小刻みに揺れるたびに、俺はドギマギしてた。
「俺ってばま夢ん中か〜・・・死ねると思ったのになぁ・・・」
カラッと笑うナルトの狂気を、俺は間近に感じて、震えあがった。こんなにも冷たい空気をかんじたことはない。きっと、ナルトは自分の夢と勘違いして、普段は押さえているくらい衝動を全部さらけ出しちゃってるんだと思う。
「ナルト君。こんにちは」
ここで、俺の後ろにいたキヨラさんが出てきた。
「?こんにちは。誰だってば?俺の夢には始めての人だ」
まだ勘違いをしているナルトの頬や額を抑え、キヨラさがナルトに向き直る。
「これは夢じゃないよ?夢に見知らぬ人なんて出てこないでしょ?ここは木の葉の極秘研究所の一室で、今の君には病室。どこか痛いところとかある?」
ここで、ナルトが愕然とする、本当に現に戻ってしまったことにショックを起こし、俺の言葉に驚愕し、一気にいろんなものがナルトの心になだれ込んでしまったらしく、一言
「クッソォ・・・」
そう漏らして、俺を見つめた
「俺ってば、まだ生きてんの?」
「生きてるよ」
「そう・・・もう目ぇ覚めたし、カカシ先生は帰っても大丈夫だってば。きっと、待ってる」
これは、いままで俺があってきた女たちの事なのかな・・・でも、今はナルトと修行の旅って事になってるし、なにより、もうナルト以外に興味はない。
「もう、誰も待ってないよ。俺はナルト一筋になるんだ」
「・・・なに言ってるってば?俺、だいじょぶだから、気ぃ使わなくて大丈夫だから!!」
やっと出るようになってきた声をはってナルトが笑う。俺が側にいるのを拒絶してるみたいに・・・でも残念ながら、そんなのに屈する俺じゃない。
「もう、ナルトのそばを離れない。俺にはナルト以外いらないから」
ささやくように、祈るように告げたら、ナルトの顔が嬉しそうに笑った。
「ホント?」
なんで泣くんだろう。なんで、俺はこんなにも愛しい存在を見ずにいられたんだろう。
「ねぇ・・・やりなおそう?きっとうまく行くからさ」


俺は、久しぶりのナルトの笑顔を見た。すっごいきれいなキラキラの水色から、宝石みたいな涙が流れて、まだ管だらけの腕を俺にのばしてしきりに「大好き」って繰り返してくれた。
「うん。俺も大好きだよ。早く良くなってね?」
これからもきっと色々あると思う。俺だってできた人間じゃないから、ナルトを怒らせたり、不安にさせたりがたくさんあると思うけど、この世に神様がいて、願いを叶えてくれるなら、ナルトの健やかな成長と、俺と共に歩む未来を切に、おれは願い続ける・・・


     FIN

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