言葉の違い・・・5

まずはナルトの家にあるどうしても持っていきたいって言った品々を、俺の家に移動する。忍犬も影分身も張り切って出してみたのに、ナルトが持って行くのは、観葉植物が数店と、第7班の写真が入った写真立て、それと、身の回りのものが少々・・・俺一人で十分だった。
「これだけ?」
ナルトは小さく首を縦に振って、あとはいらない。と、小さく言って、部屋に鍵をかけた。「もう戻ってこないように」と、俺は早々にアパートを引き払い、大家さんに頼んで残りの荷物は捨ててもらうことにした。
「ナルト。さぁ、俺ん家行こう?」
ナルトは小さく小さく「ありがと」と、アパートの扉に向けて発すると、踵を返した。




それから、ナルトは俺の家に住んでいる。
俺はと言えば、任務が終われば速攻帰るし、どうしても遅くなる日には忍犬にナルトにその旨を伝えてもらってる。鼓蝶のことも紹介して、鼓蝶の家に行くのだけは例外にしてもらってるんだけど、他の女の所には行かない。
ちなみにナルトと鼓蝶は気が合うらしく、俺が里外任務で帰ってこない日は鼓蝶の家にいっているみたい。帰ってくると鼓蝶のにおいがするときがあるから。でも鼓蝶がそばにいるなら俺は安心だし、なによりほかの虫がいない環境から俺は大手を振って任務に付ける・・・
そして、ナルトはまだまだ俺を疑ってるみたいだから、俺は上忍待機所でいかにナルトが可愛いか、いかに俺がナルトの惚れてるのかを日々、悪い虫対策をかねて語っているし、休日はナルトの身の回りのものを買ったり、散歩したりして、日々俺の時間をナルトで満たしたら、ナルトはだんだん信じてくれはじめてる。
ついでに、俺に付きまとっていた女たちはさっさと俺を見限った。理想と現実の違いについていけないとか、俺を神格化する忍連中も、俺を理想化する女たちも、きっと俺を見ていないんだ・・・ナルトだけが、俺をみててくれた。気付けてよかった・・・



「ナルト〜・・・ただいま」
「おぅ・・・カカシ先生・・・今日も大変だったってば?」
それでも、ナルトはまだまだ疑ってるみたい。俺の家に来たのに、おかえりを言ってくれないし、下手をすると「行ってきます」のかわりに「じゃ!!」とか言われる・・・焦る・・・
そして一緒に暮らして気づくナルト無知・・・料理の仕方は知ってるのに、食べ方を知らない。テレビはいつもアニメ。しかも近距離・・・親に教えられてこなかった事がたくさんあることの切なさを俺は痛感してる。そんな子が俺に恋をして、料理を覚えて、まるで知り尽くした女のように、夜の相手をして、さっさと帰っていく俺を見送ったのか・・・きっと俺の行動は無垢なナルトの心をズタズタにしただろうな・・・よくよく注意して見てみれば、ナルトは3か月前より明らかに細くなっているし、ふっくらときれいなピンク色だった頬も目元もくすんでる・・・
「ナルト・・・ごめん。俺は最悪の人間だったね。でも、ちゃんとナルトのこと大好きだから、これから俺と一緒にご飯食べて、一緒に寝て、休みの日は買い物したりしようね?」
良く見なきゃいけなかったんだ。なんでこんなに俺はナルトを特別視してきたか、なんでこんなに相性がよかったのか・・・きっと運命の相手だったから・・・
「カカシ先生・・・仕事・・・だってばよ?玄関でいきなりなに言いだすんだってば・・・」
照れたように真っ赤になりながら俺に文句垂れてるナルトにチュッとキスを落として、俺は任務にでかける。今日は下忍任務は休みだから、本来はナルトと二人でのんびりしたいんだけど、任務もこなさないとナルトはおこるからしかたない・・・
今日は簡単な暗殺依頼は一件・・・
俺なら午前中には終わる。っていうかおわらすために早起きしたんだ・・・なんとしても午後には帰らないと!!


簡単な任務。簡単に寝首をかいておしまい。
さっさと帰還して報告も終わり!!
さ!!帰ろう!!今日はナルトの好きな一楽でも行こうかな・・・
「ただいま〜ナルト〜」
ちょっと大きな声でいっても、気配はなるのに返事がない。いつもは「おう」とか、「カカシせんせ〜!!俺一楽いかないとしんじゃう」とか返事が返ってくるのに・・・
「ただいま・・・」
もう一回行ってみたら、ナルトがあるいてこっちにくる気配がする・・・
「・・・・・」
「ただいま」
「・・・」
「・・・」
「・・・おかえりってばよ」


こんなにうれしい一言はない・・・
俺が今まで言ってきた言葉の陳腐さを実感するよね。心がある言葉ってこんなにやさしくて、こんなに愛情を感じれるんだ・・・


「ただいまナルト。」
「おかえりカカシ先生・・・」
  

      FIN






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