コワレテルアイジョウ

「カカシ先生・・・狐の俺の近くにいたら先生まで石投げられちゃうってばよ?」
病室に横たわるナルトの頭は包帯で巻かれ、火影様の配慮で個室に入れられたナルトの目はとてもさみしそうにほほ笑む。
「カカシ先生・・・俺、もう忍できないかも」
俺に向けて、無理に笑うナルトの足には大きな傷・・・



数日前、ナルトは酔った里の男たちにリンチされ、大けがを負った。
犯人は今も不明で、里の忍が目下捜索中・・・見つかるわけもない・・・誰も本気で探してないから。
ナルトは頭を強く打ったことと、足を堅い何かで叩かれた傷が要因で、現在木の葉の総合病院で入院生活を送っている。
頭の傷は、それほどひどくなく、正常に治っている。しかし、足は骨を粉砕骨折し、靭帯断裂、神経も傷ついていて、ナルトは現在一人で立ち上がることすらままならない。
しかし、脚力も重要である忍にとって、致命的な傷であることはたしかで、ナルトは精力的にリハビリを行っているが、なかなかうまくいかない日々にあきらめを持ち始めていた。
俺と言えば、毎日ナルトの世話をして、ナルトを元気づけている。ナルトは笑った顔がかわいいからね。
「ナルト・・・じゃあ、忍にならないなら、俺のお嫁さんになってよ?」
俺はナルトの事を好きで、ずっと見てきた。誰より頑張っているナルトを知ってる。
だからこそ、俺の一世一代の告白っていうかプロポーズ・・・
「カカシ先生。俺ってば男の子・・・」
ナルトが困った顔で笑う。
そんな顔もかわいいね・・・
「俺はカカシ先生のゆーしゅーなDNAを残せないってばよ・・・」
ナルトと付き合いだしてからずっと、ナルトが影で言われ続けていた言葉。俺が見て見ぬふりをしてきた言葉。きっとナルトの心にたくさんの傷をつけたのであろう言葉・・・
「大丈夫。体外受精で産んでもらって、それを俺とナルトで育てればいい」
俺が勤めて笑顔で言えば、ナルトがちょっと笑ってくれる。困った先生だなぁ・・・なんて笑ってくれるナルトの顔が大好き。
「カカシ先生・・・俺ってばもうダメだってばよ。忍になれないなら、俺ってばなにしればいい?あるけない俺って、なにができるってば?」

「ナルト・・・なにがいいたいの?」

「・・・俺ってば、もういらない。」


・・・時がとまった。いくらリハビリをしてもよくならない足に、きっと嫌気がさしたんだろう。どう考えても、毎日かけまわっていたナルトがもう何日も歩いていないのは、とてつもなくストレスだろう。
どうしたって、ナルトの足をすぐさま治すなんて無理だ。
ナルトは俺の恋人ですべてで、ナルトが居ないとがんばれない。
ナルトさえそばにいてくれれば、なにがどうなってもかまわない。
こんな里はどうだっていい。里の中にナルトがいるから守ろうと思えるし、がんばろうって思う。

「ナルトがナルトをいらないなら、俺がナルトをもらってあげる」

俺の中で、様々なものが荒れ狂う。
ナルトにとっての己の存在価値は、きっと忍になって、火影になって認められることにあったのだと思う。
このままでは、ナルトが生きる意味を見失ってしまう。俺のために生きてくれるのであればなんだっていい。むしろ、忍なんて危ないことしなくていいから、そばにいてくれればそれでいい。
そう・・・俺のそばにいてくれれば、なんだっていい・・・

「カカシ先生・・・?俺をもらうって?」


「ナルト・・・俺のペットになりなよ?俺だけのために存在して、俺を癒して、俺の帰りを待つだけの俺だけのものになりなよ?」



ナルトが、いびつに笑う。
その歪んだ笑顔もかわいいよ・・・
うなずいたから、もうナルトは俺のもの・・・
俺のためだけに存在し、俺のためだけに笑ってね・・・
俺は今まで通り、毎晩毎晩、術をかけて眠ったナルトの足を叩くからさ。

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