大好きな人5

なんて幸せな人生なんだろう・・・
大好きな人の腕の中で死ねる・・・
大好きな人が俺に死んでほしくないと縋ってくれる・・・
俺は、普通の人間じゃない・・・
化け物なのに、こんなにもあったかい手が、声が、感触が、俺に縋りついて泣いてる・・・
カカシ先生・・・





「カカシ!!!ナルトを地面におろせ!!解呪の術を行う!!」
俺の腕の中で虫の息でいるナルトを、火影様に奪われるようにして離せば、儚く消えてしまいそうなナルトは、ほほ笑んだような顔で力なく地面に横たえさせられた。
冷静沈着。プロフェッサーとまで呼ばれた火影様が額に大汗かいてナルトに向けて術を放つんだけど、俺にはなんか現実味がなくて、ちょっと遠巻きにしていたら、ナルトの体から白い靄のようなものが抜けて、どこかへ向かっていった・・・
「カカシ!!この呪詛を放った大本へあの靄は向かうはずじゃ!!即刻消せ!!」
火影様に言われるまでもない・・・俺は靄を追って走った。
たどり着いた場所にいたのは、うら若い女・・・コンビニの裏でナルトを見つけた時、ナルトを馬鹿にした女と、数人の若い男・・・
「あんたがいけないのよ!!私より化け物をとったんだもん!!私は悪くない!!あの化け物がイケないのよ!!!」
狂気に狂ったような目で俺を見るその女の方がよっぽど化け物だった・・・
あんなに優しくてかわいそうな、俺のナルトを化け物と言うのであれば、この里にいる大半が化け物だ・・・
俺はその場にいた全員を一閃し、灰も残らぬ様に消し去った。
ナルトを傷つける事は許さない。俺を信頼しているようで心の中では疑っているであろうナルトに信じてもらうために。


ナルトは、火影様の術により一命を取り留めたものの、目を覚ますことなく5日の間寝続けた。ナルトが目覚めた時一番近くにいるのが俺でありたかったから、片時も離れなかったし、毎日話しかけた。
「ナルト・・・起きてよ・・・俺に話しかけて?どんな話でもいいんだ・・・」
やっとのことでガリガリで傷だらけの体をきれいに戻したのに、今のナルトは小さく、今にも消えてしまいそうなほどにか弱い。
点滴のみでやせ細っていく体と、白くなっていく肌。
俺は自分の無力さを身にしみて痛感しつつ、ただナルトが目覚めることを祈るだけだった。



ナルトが目覚めたのは、ナルトが倒れて7日が経ってからだった。
ナルト自身驚くほどの細さになって、俺は目覚めた事が嬉しくて、ただ泣きながらナルトを抱きしめて、よかったって言い続けるしかできなかった。



カカシ先生が俺を抱いて泣いてる・・・よかったって言って泣いてる・・・なにがよかったって言うんだろう?俺みたいな化け物がまだ生きてるんだよ?
ほら・・・カカシ先生の声に反応して様子見に来たお医者さんが複雑そうな顔で病室を出ていった・・・俺が生きてて嬉しいなんて、里のエリート忍者が言っちゃいけないよ・・・
あぁ・・・大好きなカカシ先生。俺の最愛の大切な人。
カカシ先生のこと信じてみたいよ?カカシ先生を信じ始めているよ?
でも、里がそれを許さないと思うんだ・・・
カカシ先生は里の英雄で、みんなの憧れの人だから、俺なんかに構ってたらダメだよ?おれはカカシ先生を見ているだけで幸せになるって死にそうになって気づいたんだ。カカシ先生が俺の視界にいるってだけで、死さえも幸せになったんだ・・・
だからさぁ・・・俺が死ぬまではそばにいて?






[ 16/95 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -