大好きな人2

とぼとぼと歩きだす俺の背中を、大好きな人が掴んだ。
「お前じゃな〜いよ?」
カカシ先生は俺の肩を結構強い力で掴んでて、俺は動けないでいるのに
「5・・・4・・・3・・・」
カウントを始めた・・・そっか・・・これで俺が動かなかったら他の大人みたいに俺をいじめるのかな・・
「キャ――――――!!」
さっきの金切り声と同じ声が遠ざかっていく・・・あぁ、あのお姉さんは血とか苦手なのかな・・・カウントが止まった・・・これからはじまるのかぁ・・・
「カカシ先生・・・」
精いっぱいの声で呼べば、カカシ先生の手が若干弱まって、俺をカカシ先生と向き合うような態勢に返された。
「俺ってば図々しくもお願いがありますってば!!」
カラ元気なの丸わかりな震える声だけど、ちゃんとお願いしなくちゃ・・・
「なに?」
優しげな声と笑顔でカカシ先生が俺を見てるから、俺は一瞬勘違いしそうになるけど、勘違いなんてしたらきっとお願い聞いてもらえないかもしれないから、その思いは心の奥にしまいこむ
「俺ってばなにされても逃げないし、なにされてもいいから、カカシ先生がもういいやって思ったら、俺の首をはねてってば!!俺ってば今まで何回か自殺してみたんだけど、何やっても死なねぇし、なにされても死ななかったってばよ・・・でももう生きんの疲れたし、父ちゃんと母ちゃんに会ってみてぇからさ」
なんか言ってって悲しくなってきたけど、おれより悲しそうに歪むカカシ先生の顔がなんか変だ・・・俺を殺すの嫌なのかな・・・何回も何回もいじめたいのに、一回しかいじめられないのは嫌か・・・しょうがないから、やっぱり山に行って、鋼張って自分で切るしかないか・・・
「・・・やっぱりいいってば・・・俺ってばまだ死にたくなし、今日はここでバイバイ・・・」
さぁ、山に行こう。もう苦しいのはおしまいにしよう・・・一楽のおっちゃんには悪いことしちまったな・・・俺のせいで事故に会ったんだ・・・
「そっちはナルトの家じゃないよ?」
カカシ先生が引きとめてくるけど、俺はもう気にしないで足を動かす。空腹の限界にきてる体がカカシ先生に持ちあげられても、足を動かす。
「ナルト・・・たぶんお前のご両親はお前に会いたくないよ?」
両親すら俺を嫌うのか。そっか。カカシ先生は絶望をくれるために俺を抱き上げたのか・・・
「そうだよな・・・化け物産んじまったらそりゃ会いたくないよな・・・もういいだろ?おろせってば・・・俺ってばかえるんだ・・・」
そう。還るんだ土に・・・
「ナルト・・・どうしたの?なにがあったの?俺に教えて?」
そういった先生は、俺の抱っこしたまま瞬身でおれんちまで来てしまった。



「お邪魔します」
律義にお辞儀して俺を抱えたまま部屋に入ったカカシ先生が、俺の部屋を見て、驚いたのか、俺をおもいっきり玄関に落とした
電気のつかえない室内は、冷房とかないからすごく熱くて、水が出ないことも相まって観葉植物は枯れ果ててる。でも、俺が全部食べちゃったから葉がなんにもない。
任務に疲れて外に出れそうにない日ようにとってある川の水は異物が浮かんでる。
そりゃ驚くよな・・・人間の住む場所じゃないもん。
「ナルト・・・なんでなんにもいわなかったの?」
「言ったら心配かけると思って・・・」
俺をいじめるつもりがあまりの現状に同情でもしたのかな・・・だったらひと思いにここでばっさりやってほしい・・・
「どうやって生きてたの?」
「山に行く元気があれば川の水飲んだり、木の実食べて、元気なかったらゴミ漁って、それもできないときはそこらへんの雑草と、川で汲んできたそこの水・・・」
ぼそぼそ話す俺の言葉に優秀な上忍であるカカシ先生が泣いている。
「・・・つらかったね・・・」
一言。カカシ先生はたった一言だけそういって俺を抱きしめた。
あんまりガリガリだと心配されると思って服の中に隠してたタオルがバレたらどうしようとか思いながら、体を硬直させて、投げに備える。
だいたいこういう密着の後は関節技か投げ技のどっちかだ・・・優しい言葉は油断を誘う常套文句だ・・・
「ナルト・・・大丈夫だよ・・・」
俺の頭を撫でて安心させようとしているみたいだけど、きっと気を抜いた瞬間に痛いことされるんだ・・・
「ナルト・・・俺を信じて・・・大丈夫。あったかいご飯食べよう?俺んちにおいで。一緒にくらそうよ。大丈夫。俺が守ってあげる。」
なんなんだ・・・もしかしたら心の奥にしまったモノは間違いじゃなかったのかも知れない。カカシ先生は俺を心配して、守ってくれるのかも知れない。
俺は、どうしたらいいんだろう
「俺といると不幸になるってば・・・」
「俺にとってはお前がそんななのがなにより不幸だよ」
カカシ先生に促されるままに、里の大通りをカカシ先生に捕まりながら、ふらふらとする足元を叱咤激励しつつ、歩いてく。どこに行くかしらない。もしかしたら、このままどこかに閉じ込められて、一生いじめ抜かれて死ぬのかもしれない・・・




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