大好きな人

ただ好きなだけ。
大好きな人がいるんだけど、その人は里の大切な上忍で、俺の先生で、俺のこといじめないでくれる大人の男・・・
里の嫌われ者で、生きてるだけで迷惑なんだっていっつも言われるから、絶対に言えない。

ただ好きなのに、一緒にいたいだけなのに、それすら認められない。
俺が必要以上に近づくと、その人まで大変な目にあう・・・
俺は里でなんにも買えなくても、山になってる木の実とか、残飯とか漁ればいいけど、普通の人はそんなんじゃ生きて行けない・・・
俺は俺の中にいる化け物が俺を生かすから、例えなんにも食べなくても大丈夫だけど、、あんまり食べないと痩せちゃって、俺の大好きな人に心配かけるから・・・俺を心配してくれるから、俺は元気でいなくちゃいけないんだ・・・
残飯漁っても、どんなに叩かれても、蹴られても、俺は生きなくちゃ・・・



今日も俺はゴミ漁り・・・嫌な顔をしつつも俺に食べ物を売ってくれていたスーパーは、突然俺を店に入れてくれなくなった。
いつも食べにいっていた一楽は、おっちゃんが事故に合ってしばらく休業だとか。
いつも買ってた自販機は、不審火で撤去。公園の水飲み場は故障で撤去。お金は払ってるはずなのに、昨日からガスも水道も止められた。今日の朝は電気もつかなかった。
いつも漁ってる収集場所には、鍵がかかってって、仕方がないからちょっと遠くまで食べ物探しに歩いてたら、コンビニの裏に期限切れのおにぎりが捨ててあった・・・あんまり体力残ってないけど、おなかすいてしょうがなくてついつい走り寄ったら、大好きな人がきれいなお姉さんと歩いてた。
気付かれませんように・・・
せっかくのご飯・・・諦めようかな・・・でも、大好きなあの人はお姉さんに夢中みたいで気付いてないよな・・・このままここに隠れてよう・・・
息を殺して、気配を断って、最近ちょっぴり痩せてブカブカになりだしたジャージを目いっぱい引っ張って緊張をやり過ごす。
路地裏からこっそりのぞけば、大好きなあの人の姿はもうなかった・・・
やった!!これでご飯が食べられる!!


「ナルト?」
おにぎりに手を伸ばしたら、後ろから声がした・・・
大好きな人の声・・・さっきまで消してた気配が食べ物に気を持ってかれててダダ漏れだったんだ・・・
振り返れない。俺の手には廃棄されたおにぎりが大事そうに握られてるし、何日もまともなモノ食べてないから、空腹は限界にきてて、よだれが顎を伝ってる・・・
「ナルト・・・だよね?」
俺の肩に手を置いて振り向かせようとしてくるけど、その手に力が入る前に止まった
「カカシ〜?ゴム買ったよぉ?・・・ヤダ!!!化け物じゃない!!キモチワルイ!!最近こいつにかかわったら不幸になるってもっぱらの噂よ?なんでもこいつんちの近くにある商店にこいつに食べ物を売ったら潰すって脅迫状が届いてるんですって・・・
その脅迫状無視してたどっかのラーメン屋の店主は階段から突き落とされて重症。近所にあった自販機も全部壊されて、全撤去したらしいし、公園なんて水場に狐の死骸置かれてたんですって〜・・・」
お姉さん・・・俺ここにいるよ?俺に聞こえないように話してよ・・・
俺の大好きな人に聞こえないように話してよ・・・
あぁ・・・そっか・・・そういうことだったんだ・・・
この里で俺が存在していることがダメなんだ・・・
「カカシ〜・・・こんな化け物ほっといてホテル行きましょ?」
大好きな人の影にしなだれかかる影・・・
早くどっか行け・・・
もうたくさんだ・・・
生きるってなんでこんなにつらいんだ・・・俺は存在することすらダメなんだ・・・
「ナルト・・・最近急激に痩せたのは夏バテだって言ってたじゃん・・・ご飯食べてなかったの?」
「カカシ!!なにしてんのよぉ?もう!!化け物はさっさと里から出て行きなさいよ!!」
金切り声で叫ぶお姉さんの声にも俺は振り返らずにただ鼻で息することすらできなくて、あけっぱなしの口からこぼれるよだれが落ちるのを見ていた。さっさとどっかいってよ・・・
「俺が5数えるうちにここから立ち去れ・・・」
大好きな人の声が俺に去れと言ってる。邪魔しちゃったのか・・・ごめんなさい・・・せっかく見つけた食べモノなのに・・・諦めて今日は山に行こうかな・・・夏の今なら雑草たくさん生えてるし、おなかいっぱい食べられるさ!!
邪魔してごめん・・・カカシ先生。大好きなカカシ先生に見られたあげ句に、邪魔しちゃったなんて・・・ごめんね。

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