未曾有の大事件!?2

『RRRRRR・・・』
ミナトが火影邸に戻るとほぼ同時にけたたましい電話の音が鳴り響いた。
「はい。波風です。」
ミナトが電話をとれば
『とおちゃ・・・ここどこだってば?』
今一番聞きたい声が受話器越しに聞こえた
「ナル君!?」
ミナトが受話器を破壊せんばかりの勢いで耳に当ててナルトのいる場所を割り出そうと極限まで耳を澄ます。
『・・・御子息が心配ですか?』
受話器越しに聞こえてきたのは女の声。
『無事に帰して欲しければ、カカシさんを私に返して!!』
狂気に染まったような声に、なんとなく覚えのあるミナト。数年前にカカシと付き合っていたくの一で、変化の術を得意とし、現在は潜入任務専門の特別上忍である。何度か火影邸にカカシを探して訪ねて来たり、電話してきていたので覚えている。しつこそうな印象はいっさい受けない清純派な容姿に似つかわしくないその行動の数々にカカシが辟易したことと、ナルトが生まれてカカシがナルトにかかりきりだったこともあり、自然消滅したと聞いている。
「君は・・・カカシ君を君のもとに送ればナル君を返してくれるの!?いくらでも持ってって!!僕のナル君とイチャイチャするから・・・僕そんな弟子いらないから、もらってくれるならどうぞ!!!!!」
『・・・この子・・・カカシさんとイチャイチャしてたの・・・』
ミナトは墓穴を掘ったことを自覚した。この手の女はヤバい・・・後先考える知能がなくなっている。幸いなことに身元が判明した。カカシはその子のチャクラくらいは覚えているだろう。側に控えていた暗部に唇だけで『お前の昔の女の逆恨みのせいでナル君ピンチ!!』とカカシに伝えろと告げ、なんとか話を伸ばしてナルトから興味をそごうとミナトが躍起になりだす。
「君は、どうしてカカシ君が好きなの?」
『憧れだったのよ・・・誰よりも忍びらしくて、任務で一緒だった時に変化じゃない私を見てかわいいって言ったのよ・・・憧れの人から言われたの・・・それで・・・大好きになって、カカシさんに告白したら、いいよって言ってくれたのに、私以外にも彼女がいて、体だけの関係になっていって・・・それでもよかったの・・・カカシさんが会いに来てくれてたから・・・でもね・・・火影様のご子息の教育係りになるって言って・・・「そういう関係は全部捨てることにした」って言われたのよ!!私たちの関係は「そういう関係」だったのよ・・・カカシさんから終わりと言われれば他人になってしまうような・・・私は・・・私は・・・』
受話器越しに聞こえてくるすすり泣きが、なぜか二つ・・・
『お姉さん可愛そうだっちぇば・・・カカは悪い子だってば・・・ちゃんとごめんなさいしない子はおこりゃれりゅってば・・・』
「な・・・ナル君!?」
ミナトはナルトがどういう状況にあるかまったく理解していないだろうナルトに素っ頓狂な声をあげ、「カカシくんはまだなの!!」とか、戦々恐々とした心境で受話器に耳を押し付ける
『ぼうや・・・わかってくれるの?お姉さんはただ謝ってほしいだけなのよ・・・』
ナルトは決してわかってはいない。ただなんとなく目の前にいるお姉さんを泣かせているのがカカシだということを理解して、誰かに悪いことをしたら謝らなければならないと教わったから。という結構あっているようでまちがっているような発想である。
『バン!!!      ナルト!!』
受話器越しのドアの開く大きな音とカカシの声。そしてあからさまに「プゥゥゥ」という、声をあげて怒っているナルトの声。




「カカチ!!」
さめざめと泣くくの一の前に庇うように立ちふさがり、仁王立ちでカカシを見つめるナルトの目は涙ぐんでいるが、完全に怒っているのを主張するようなぷっくり膨れたほっぺと、とんがった口から発している「ぷぅぅぅ」という音。
「は?」
カカシはわけがわからずにとりあえず保護。とばかりにナルトを抱き上げようとするが、
「カカチ!!しゅわんなちゃい!!」
舌ったらずなお説教の始まりである・・・なにがなにやらわからないカカシに、くの一が「火影様がカカシさんに代われって」といって受話器を差し出す。
『あ・・・もしもしカカシ君?そこの彼女が、君の悪行をナル君の前で話しちゃってさ〜・・・ナル君がそれ聞いてカンカンなのよ・・・頑張って機嫌とってね?むしろ嫌われて?そしたら僕だけのナル君♪・・・ブツップープープー・・・』
言うだけ言って自分は逃げるように電話を切ったミナト。ミナトだってクシナと会う前まではだいぶ悪行かさねて来たが、すべてが円満解決している。蒸し返されては大変だとばかりに、ナルト捜索に当たっている暗部に撤収の号令をかけ、自分は職務に戻るのであった。


「カカチ!!お姉さんないてゆの!!カカチがなかちたんでちょ!!メッよ!!悪い子!!悪いことチたらめんちゃいちゅんでちょ!!」
つい先日、パックンの尻尾を引っ張ってパックンを涙目にさせたナルトに対し、カカシが言った言葉そのままが来た。子供とは怖いものだ・・・とかちょっと引きつり、ナルトは記憶力いいな〜絶対頭のイイ子に育つよなぁ。とか感心しつつ、ちゃんと正座で拝聴する。
「カカチ!!めんしゃいは!!」
「・・・ごめんなさい!!でした!!」
カカシはくの一に向かって深々と土下座のような形で謝罪をし、
「カカチがめんしゃいでした!!」
ナルトが一緒に頭を下げれば、くの一が優しくナルトを抱っこして「ありがとう」とささやいて、ほほ笑んだ。
「カカシさん・・・あなたに育てられたはずなのに、この子はとてもいい子ですね・・・」
「イイ子!?」
いい子と言う言葉に異常に反応するナルトに、二人がほほ笑んで、「いい子にはお菓子を買ってあげよう」と、カカシが言えば、遮るように
「迷惑をかけたお詫びに、甘栗甘でおごりますよ」
などと言われれば、ナルトが先ほどから抱っこされている豊満な胸にしっかりすがりついて「おしるこ!!」と叫んでいる。



一方
くの一のマンションの前では先ほどのおびただしい暗部の数が噂を呼び「今、火影様のご子息が誘拐されて、このマンションに拉致されている」というあながち間違っていない話に持ちきりで、里の主婦の皆様がマンションの下にあつまっていた。

そこへ登場のナルトを抱っこした特別上忍のくの一と、なんだかおもしろくなさそうに二人を党巻きにしつつついていくカカシ・・・
特別上忍に抱っこされるナルト・・・
おもしろくなさそうなカカシ・・・
おもしろいネタを探す里の奥様方・・・


このあとしばらくの間、「ナルトの世話係のはたけカカシが、ナルトを誘拐して、特別上忍に連行されていった」という噂がまことしやかにささやかれたのだった。




「カカシ君・・・因果応報だよ・・・」
真実を知るはずのミナトはこの件に関し、関係した者たちに緘口令を敷き、真実を隠蔽した。特別上忍のくの一はその後すぐに、他里への潜入捜査に出向き、里から姿を消した。また、過去にカカシによって傷ついた女たちも、今回のカカシのふがいない噂を耳にして溜飲が下がる思いで、「カカシ上忍はショタ専だったのか・・・」と、噂に尾ひれをつけるような独り言を大声でつぶやくのだった・・・


             END

[ 6/95 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -