愛のカタチ カカシサイド

ナルトの様子がおかしい。明らかに日を追って細くなる体、鈍くなる動き。
徐々に弱っている。
「ナルト〜?飯くってるかぁ?カップ麺だけじゃだめだぞぉ?」
ナルトの髪を触り、それとなく質を調べれば、絹のような手触りは著しく損なわれ、畑仕事でまくりあげられているすそをのぞけば、手足は女子より細い。
「まぁ、とりあえずお昼だし、ごはんにしようか」
カカシが声をかければ、中腰で作業にあたっていた体を伸ばしつつ、サクラとサスケが近寄ってくる。


昼食時にそれとなくナルトを見れば、食べているのは小さな菓子パン一個。早々に食べ終わり、早々にいなくなる。
明らかにおかしい行動に、残された三人は疑問に思う。


「おなかすいたってば・・・」
ちいさくつぶやくナルトの背後にはカカシ。「あぁ・・・ナルトは可愛いけど、ここで食べ物をあげたら反則だよねぇ・・・他の二人はしっかり生活できてるわけだし・・・平等じゃないよねぇ」と、ナルトの背後から姿を消す。それに気付かずに、ナルトはただただ川に顔を突っ込んで水を飲み、飢えをしのぐ。


それから2日としないうちにナルトが任務に来なくなった。最初は集合場所に顔を出し「体調が悪いから行けない」と言ってきたナルトだが、今は顔すら出さなくなった。
心配になったカカシが言家を訪ねる
「ナルトの家かぁぁぁ・・・ちょっとどきどきする・・・エプロンとか付けてお茶とか出されたら襲っちゃいそう・・・」
まったく危険な上司であるが、これでも大層心配しているのである。
それが証拠に、カカシの手にはありとあらゆる薬が持たれている。体調不良のナルトを気づかい、でもなんの病気かわからないから、あらかた買ってきた。
『コンコン・・・』
ノックに反応して、衣擦れの音がする。ベットから降りたのだろう。しかし、ナルトの気配は玄関で止まり
「ちょっと体調が悪くて・・・今は誰とも会いたくないんだってばよ・・・ぶさいくになってから・・・」
カカシは「ナルトならどんな顔でもあいするよ!!」とか気持ちの悪いことを思いつつも、「そうなの?じゃあ、明日も任務だから、いつもの時間に待ってるから、これたらおいで」と言って、その場を去る。
それが数日続いた・・・
明らかな疑念を持ったカカシは、ナルトの部屋に強硬突入を果たし、ナルトの壮絶な姿を見る・・・「俺のナルトが・・・可愛いほっぺがこけてる・・・きれいな瞳がくすんでる・・・髪が・・・手が・・・脚が・・・唇が・・・」とか悲壮感たっぷりに心の中は断崖絶壁で叫んでいる。カカシがなぜこうなったのか聞いてもナルトは答えない。おそらく脳内であまり理解できていないのだようと勝手に解釈し、ナルトの部屋を見る。
空の冷蔵庫と戸棚に驚愕しつつ、即座に影分身を買い物にやり、自分はナルトに
「なんで相談しなかったの!?」
と、問い詰めれば、「サスケは生活してる」という答えが返ってくる。「お前のためなら俺は財産なくなってもいい!!」とかバカげたことを考えつつも、ナルトの質素な生活ぶりが垣間見れる部屋を見渡し不審に思う・・・「どこで給料使ってンのこの子・・・」なんとはなしに、部屋のゴミ箱をのぞけば、目に入るレシートは明らかに高い商品がない。そして、キッチンのゴミ箱には明らかに賞味期限の切れたパンと牛乳のパッケージ・・・思考がつながれば何のことはない。ナルトは買い物をさせてもらえていないのだ。買わせてもらえるのは期限切れのもの。カカシの中で何かが切れる。
影分身に木の葉スーパーの店長と話すように指示を出し、ナルトに「一緒に暮らそう」と告白するも、フられる・・・そりゃ見事に信じてもらえていないという耐えがたい事実付きでフられる・・・


「ナルトは何回も裏切られてきたんだ。自分とは関係ないはずのスーパーの店員すら、日常的に裏切ってくる。そんな中で、身近な人に裏切られたらとか考えたら、怖いよな・・・」カカシが灌漑にふけっていると、恐怖が、ナルトは恐怖にカタカタと震え、「もう死にたい」と小さく漏らした。
「ナルト・・・俺はお前が好きだよ?絶対にお前を裏切らないし、大切にする。」
約束・・・と言って出された小指の意味を測りかねていると、カカシが無理やりに小指を結んで、約束の印。と言ってつないだままの小指にキスをした。


ほどなくして帰ってきた影分身にキッチンに移動するように言い、ナルトには「料理してくるから、その間に考えといて。俺は本気だよ」と言い置いて、キッチンへ移動する。
料理をしつつ事の真相を聞いたカカシは、こっそりと影分身に起爆札を渡し、「ヤッてこい」と頬笑み、ナルトにおかゆを作る。
まだまだ疑り深いナルトは、それでもちょっと嬉しそうに、起き上がる力すらない自分の支えておかゆを食べさせるカカシに「お世話になりますってばよ・・・」と真っ赤になりつつほほ笑んだ。「可愛い!!食べちゃいたい!!っていうか、イタダキマス!!」とか心の中で天使が飛んでいるくらいにハッピーを醸し出したカカシは、
「ナルト!!なんでも買ってあげるから、本当に必要なモノだけ持って、今日から俺んちおいで。」
と言って、ゆっくりとナルトにご飯を食べさせつつも、ナルトが元気になった暁には・・・とかいうめくるめく妄想に浸っていた。
そんなカカシをちらちらと見ながら、ナルトはイルカ以来の自分の世話を焼く大人にほんのりほっぺを染めて「かっこいい」とかつぶやいたのであった・・・。




余談ではあるが、この日、木の葉の里にある比較的大きなスーパー「スーパー木の葉」が原因不明の大爆発を起こし、近隣住民への補償や働く場を失った従業員への保障や退職金、壊れた店舗の修繕などで、スーパーの店長は破産。せっかく修繕した店舗を大手のスーパーに明け渡すことになってしまったとか・・・


      FIN




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