愛のカタチ ナルトサイド

レジに並んでいたら、品物を出した途端に店員が店の奥に入っていき、品物を賞味期限の切れたものと交換された。牛乳もパンも、買うことを許してくれる唯一の店だから、文句も言えず、ナルトは店員にありがとうと言って品物と、明らかに少ないお釣りを受け取った。

帰って冷蔵庫にしまおうとしてみると、明らかにおかしい匂い・・・食べられるようなものではないけれど、食べなくては生きられない。
冷蔵庫にはそんなものばかり、唯一の救いは、近くにカップ麺と飲み物の自動販売機があるから、そこである程度買えること。

それでもカップ麺だけではダメだと担当上忍に言われたから、ナルトは明らかにおかしい味のする牛乳を飲み、パンを食べる。そんな味のものしか知らないからさしておかしいとも思わない。


「もうお金ないってば・・・もうなんにも買えないってば・・・」
まだアカデミー生であった頃は火影からの十分な援助が出ていた。しかし、買い物をすれば、明らかにおかしい金銭授受、里を歩けば暴行を受け、小銭すらもとられてしまう日々。ついには下忍になり、援助もなくなった。自販機は何回も利用すれば高くつく。
ナルトは徐々に弱っていた。
下忍になってからというもの、イルカにおごってもらえる機会も減った。友達の家で夕飯をもらう機会も減った。そして、忍になることを是としない里人からの風当たりは冷たくなった。チョビチョビとしていた貯金も底をつき、冷蔵庫に入っている昨日買った食パンのカビをとりつつ最後の一枚を食べ終えた。
ナルトの部屋の冷蔵庫には、今日やっとの思いで買った、小さな菓子パンが一つ。任務に何も持っていかないと、サクラやサスケが心配するから、あすの弁当用に買ったのだ。
「もう・・・おかねないってばよ・・・俺ってば、あと何日生きられるかな・・・」




ナルトは、数日としないうちに任務に来なくなり、心配したカカシが部屋へ行っても「大丈夫だってばよ!!ちょっと風邪ひいたんだ」と、あまり元気のない声が返ってきた。小さくても下忍であるナルトが大丈夫だというのであれば、とカカシは数日の間、「明日は任務だから、いつもの場所で。これたらおいで。待ってる」と言い置いて早々に帰っていく。
そんなことが5日も続けばカカシも疑問を持つ。今日もカカシはナルトの部屋を訪れ、ノックする。手にはドアを壊すためのチャクラ、背後には忍犬。
「ナルト〜?」
「・・・・・」
返事がない
「ナルト?」
「・・・・・帰って」
かすかに聞こえる声はかすれて声とは言い難い息。明らかにおかしい弱り切った気配。
そして、いつものナルトらしからぬ、拒絶・・・カカシは手にしたチャクラでカギを壊してナルトの部屋に入る。
そこには、自分が知っている太陽の匂いの元気な少年はいなかった。手足は枝のように細り、目はくぼんで生気がない。小さく「帰って」という唇はかさかさで、あきらかに栄養がいきわたっていないのが見てとれる。
「ナルト!!どうしたのよ!?」
カカシの声に反応することもできずにうわごとのように「帰って」と連呼する。
『ガタガタ!!』
カカシはナルトの部屋の冷蔵庫をあけるが、なにもはいっていない。食べ物はおろか、飲み物も、調味料すらない。
次いで、戸棚をあけてもあるのは食器。
カカシは影分身を出して買い物に行かせる。
「どうしてこんなになるまで相談しないの!?」
ナルトを起こし、明らかに軽すぎる体を抱きよせる。
「サスケは・・・同じお金でも生きてるってば・・・」
カカシはナルトの言葉にうなずく。確かにそうなのである。何も知らないカカシからすれば、こんな状態になるほど安い給料ではないはずなのである。
「お前・・・なんでそんなにお金ないの?」
ナルトは答えない。ただただ「もう帰って」と口にするだけ・・・カカシはそんなナルトがかわいそうで可愛くて、どうしようもないくらいに悲しい。
ナルトをおろし、寝かせて、ナルトの部屋を見渡す。驚くほど質素で、明らかに壊れているモノを大切に使っている様子が見てとれ、カカシにはわけがわからない。
室内を物色しつつ、キッチンへ戻り、ゴミ箱をのぞく。
「!?」
見つけたのは明らかに期限の切れた牛乳パックとパンの袋。そして、真新しいレシート・・・からくりがカカシの中で分かりかけてきた。
カカシは影分身に『木の葉スーパーの店長に事の次第を問いただせ』と伝令を飛ばし、自らはナルトの元へ
「ナルト・・・一緒に暮らそうか?俺はお前が可愛いし、お前は食うに困らないぞ?」
カカシの言葉にナルトは
「同情はいらないってばよ・・・優しくされるとその分、裏切られた時の気持ちが痛いってばよ・・・」
ナルトは何回も裏切られてきた。自分とは関係ないはずのスーパーの店員すら、日常的に裏切ってくる。そんな中で、身近な人に裏切られたらという恐怖が、ナルトを支配する。その恐怖に震えるナルトはカタカタと震え、「もう死にたい」と小さく漏らした。
「ナルト・・・俺はお前が好きだよ?絶対にお前を裏切らないし、大切にする。」
約束・・・と言って出された小指の意味を測りかねていると、カカシが無理やりに小指を結んで、約束の印。と言ってつないだままの小指にキスをした。



ほどなくして帰ってきた影分身に料理をしつつ事の真相を聞いたカカシは、こっそりと影分身に起爆札を渡し、「ヤッてこい」と頬笑み、ナルトにおかゆを作る。
まだまだ疑り深いナルトは、それでもちょっと嬉しそうに、起き上がる力すらない自分の支えておかゆを食べさせるカカシに「お世話になりますってばよ・・・」と真っ赤になりつつほほ笑んだ。
カカシがそのまま自宅にお持ち帰りしたのは言うまでもない・・・



              FIN


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