浮気性の俺×自傷気味の君3

ジャージを脱がせて、ふと気づく。この子、リストバンドなんてしてたっけ?
何気なく触って驚いた。手首が、半分くらい切断されていた。
傷跡から見て、皮膚一枚でつながっていたんだと思われる傷は、九尾の力で回復は見せているものの、ひどくいたそうだ・・・。
そっとリストバンドを外して、包帯を巻く。
「う・・・ん」
そうしていたらナルトが起きた。


「・・・あれ?俺ってばまたやったの?」
眠そうに目をこすってあたりを見まわす
「・・・カカシ先生がここに居るってことはまだ夢か・・・あ〜・・・手首切ると寝れるケド、後始末が大変なんだよなぁ・・・また部屋中血まみれになっちまう・・・」
ボソボソ言いながら包帯の巻かれた手を見て笑う
「いつもの夢と一緒だってば・・・なんで毎回毎回見ちゃうんだってばよぉ・・・。今頃カカシ先生はおねえさんたちとお楽しみだってばよ?俺の脳みそはわかってねぇのかよ〜?」
「ナルト・・・」
俺の声にナルトがこっちを向いて笑う。
「あっ!カカシ先生から声掛けられる夢は初めてだってば!!だいたいは俺が声掛けるまで椅子で本読んでんのに・・・」
「ねぇ、ナルト。。。なんで手首こんななの?」
「だって、イタイって生きてる感じすんだろ?それに、いっぱい血をだすとこうやって優しかったカカシ先生に会えるってばよ。夢にしかいないから会いに来るにはしょうがないってばよ!」
ニカッ笑うナルトは俺の知ってる元気な笑顔で、俺をせつなくさせる
「ナルト。ダメだよ?痛いでしょ?それにいくら治りが早くてもこんなに深く切ったらくっつかなくなっちゃうよ?」
俺が包帯の手を取ると、嬉しそうに笑う。
「カカシせんせ〜!!もっと触って?」
まるで猫みたいにすり寄ってくるナルトの頭を撫でて、ついでに額にキスを落とす。
「えへへ・・・」
照れて笑うナルトは、額を抑えてごろごろとベッドを転げまわる。
「!?」
そして、驚いたように起き上った
「・・・床が血だらけ・・・壁も・・・これは・・・現実!?」
ナルトはやっと気付いたみたいで俺を見上げて驚いている
「でも・・・カカシ先生がここに居て・・・え?」
しきりに「え?」って繰り返してるナルトを抱きしめて、俺の懐にすっぽり入れる。
「ねぇ?どうしてさみしいっていってくれなかったの?」
抱きしめたからだは俺がちょっと力を入れたら折れそうで怖い。でも、逃げられないようにきゅっと抱きしめた。
「だって、みんなにいわれたんだ。カカシ先生は俺を抱けないのにかわいそうだからそばに置いてるって。最初はそんなことないって思ってたんだけど、だんだんカカシ先生が遠退いてってるのはうすうす気づいてたし、なんとかかえってきてもらおうって思ってたけど、それから逆にカカシ先生がかえってこなくなって・・・置いてもらってる俺がカカシ先生を束縛しちゃったのが間違いだったんだってば。わかってる。ちゃ〜んとわかってっから、俺ってばへいき。ただ、カカシ先生がかえってくるかも〜っておもうだけで幸せなんだってばよ!!」
そう言ってるナルトの手は震えてて、泣いてるのがすぐに分かった。
「じゃ、なんで切ったのよ?」
包帯を巻いた手をつついて、ちらちら見えている首とか腕の傷をなめる
「ホントは俺に気づいてほしかったんでしょ?さみしいよって言葉で言えないから・・・俺に・・・ごめん・・・ホントにごめん・・・。俺はお前を大好きで、傷つけたくなくて・・・」
こんなの偽善だ。キレイゴトだ。ホントはめんどくさがってたんだ。
今まで追いかけられるだけで、俺がなにもしなくても女が寄ってきてたから・・・おれの恋愛の偏差値ってそうとう低いね。自分ではどうやっていいのかわかんない。
ナルトに気のきいた言葉を言いたいのに、なんにも浮かばないんだ。
それどころか、みっともなく涙流しながら謝るしかできないなんて・・・
「カカシせんせ・・・おれ・・・俺ってば・・・さみし・・・グゥ・・・さみしかったってばぁぁぁぁ」
泣きながら謝ってたら、ナルトが泣きながらちゃんと本音を言ってくれた。
「うん。うん。ごめんね?これからは毎日一緒に帰ろう?一緒に帰れないときはちゃんと何時に帰るよって言うから、一緒にご飯食べよう?任務だったら行き先とかは言えないかもしれないけど、まっすぐにお前のところにかえるからね?」
俺もナルトもハナをグズグズさせて、それでも指きりをして約束をした。
「カカシ先生・・・あのね・・・」
ナルトがやっと顔をあげてくれた。何かを言おうとしてるナルトを遮らずに、ただ言葉を待つ。
「・・・俺・・・カカシ先生にならなにされても良いってばよ?でも・・・初めてなんだってば・・・優しく・・・して・・・ほしいってば・・・」
上目使いでモジモジしながら大好きな子にそんな事を言われて我慢できる男なんていないでしょう・・・。もちろん。俺は我慢なんてできません!!
「優しく溶かしてあげる」
俺とナルトはベッドに沈んだ。



「おはよ」
「お・・・はよってば・・・」
腰立たないであろうナルトを抱っこして寝室を出ようとしたら、思い出した
「・・・今日はクリーニング業者をよびましょ・・・」
ナルトは無言でうなずいて、リビングのソファに下ろされたままの体勢で俺の動きを目で追ってる。
キッチンで朝食を作る俺を見て、はにかんだり口をとがらせたり百面相に忙しい。
「あ・・・ねぇナルト・・・冷蔵庫にサンマが一本あるんだけど、どうして一本なの?」
「だって、食べられることもなくただ捨てられるのってかわいそうだろ?」
ナルトって変に大人なところあるよね・・・
「毎日捨ててたの?」
「あれ?毎日のように買ってんのしってたの?」
「昨日しったの。で?」
「カカシ先生が2時過ぎても帰ってこないときは捨ててたってば。最初は食べてたんだけど、最近はサンマとナスを食べると吐いちゃって・・・」
あらら・・・だいぶ精神的に参ってたのね・・・ごめんね。
「じゃ、サンマは俺が食べましょ。」
俺のために買ってたサンマ。俺が食べるって言った瞬間に嬉しそうに「魚屋のおっちゃんがウマいの売ってくれたんだ」って笑った。
これからは毎日、俺が笑わしてあげる。
もう二度と、心も体も傷つけないよ。
ナルトの心身に傷をつけるのは、ナルト本人でもゆるさないんだからね!!!



  FIN


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