浮気性の俺×自傷気味の君2

「ア・・・アスマ・・・どうしてナルトはあんなに・・・」
「飯食っても吐くんだとよ。」
簡潔に告げられた言葉にハッとする。俺、ここ最近ナルトが食べてるのも、寝てるの見てないよ。どんなにはやくに着替えを取りに帰っても起きてて、「任務大変だってばねえ」って笑うんだ。どんなに酒臭く香水くさくても笑ってたんだ。
きっとナルトは毎日、俺のためだけに夕飯を作ってくれてたんだね・・・そして、ずっとその夕飯と一緒に俺のかえりを待っててくれたんだね。
「俺が問い詰めたら話してくれたゼ。ただし、お前には言うなっていうお願い付きだったがな・・・アイツ言ってたぜ?かえってくるかもしれないって思うだけで幸せなんだとさ」
ナルトは毎晩、どんな気持ちで俺を待ってたんだろう?
どんな気持ちで、俺を迎えてたんだろう?
「ついでに・・・あいつ、どっかに怪我してるぞ。しかも結構な傷だ。血の匂いがプンプンしやがる。どんなに言っても傷だけは見せようとしねぇから、後でお前が手当てしてやれ。じゃ、俺はあいつ連れて焼き肉いってくるから、お前は待機終わるまでにあいつをあの状態から回復させる策でも練ってろ」
そう言って、アスマは窓から離れて歩き出した。
所詮忍は駒でしかない。どんなに動きたくても指令があれば自分の意思など切り捨てて行動しなければならない。俺は、待機所で呼んでもいない本を広げてただ考えるだけだった。。。


ナルトは、毎日サンマとナスを交互に買って、夕食を準備したテーブルに座って俺のかえりを寝ずに待ってた。でも、俺がかえって行った部屋には夕食の気配はなかったのに、ナルトはガリガリに痩せてて目も少しうつろだった。
でも、俺がかえると笑ってくれた・・・
ナルトは・・・気づいてた?俺の浮気に気付いた上で許してくれて、そして、自分一人で苦しんで傷ついてあえいでいたのに、俺には気づかせてくれなかったんだ。
いや。
見ていればわかったはず。
いつものぞく冷蔵庫に食材とか入ってなかったから、きっとゴミ箱には作った料理が捨てられているはず。
後ろめたさを押して、ナルトを見てればきっと痩せたナルトに気づいたはず。
酒やたばこ、香水のにおいさえしなければ、ナルトの傷に気付いたはず。
・・・俺が
俺が浮気しなければナルトは傷つかずに済んだはず・・・。


俺は、その日はさっさと家に帰ろうと思ったんだけど、ナルトを迎えに行こうって思って、焼き肉屋へ向かった・・・
「見て〜!!狐がアスマさんをたぶらかしてるわ!!カカシさんに捨てられたら今度はアスマさん!?やるわね〜・・・っていうか、カカシさんとこの前ヤッた時、あの人キモチイイって言ってたけど、あんたとヤる時はどうなワケ〜?あっ!そういえばカカシさんがあんたには手ぇだしてないって言ってたっけ?ごめんなさいね〜?あんたみたいなガキで男の狐なんて・・・ねぇ?」
卑下た嗤いを顔に張り付けた二人の女がアスマと並んでいるナルトにはなった言葉に凍りつく。あの子はこんなことを言われてるのに、俺に笑いかけてくれてたのか・・・
「おい!散れ!うるさいぞ!!」
アスマがナルトを背後にかばった。
その後ろで、ナルトがしゃがみ込む。耳をふさいで目を閉じて、からだを振るわせながら・・・
「おいナルト。もう大丈夫だ!」
アスマが手を伸ばしてナルトが顔をあげた瞬間
「うぅ!!」
ナルトが店内に戻って行った。
茫然とする俺に、アスマが視線をよこす。
俺が何か言おうとした瞬間
「お客さんのお連れの方がお手洗いで吐いて倒れてしまって!!」
あわてた様子の店員さんがアスマを呼びに来て、アスマと俺があわてて店内に入ると、トイレで倒れているナルトがいた。
抱きあげた感触は骨ばってて軽い。そして、酒や香水に侵されていない俺の嗅覚がナルトの血のにおいをかぎ取った。
「アスマ。後は俺が・・・」
そう言ったら、アスマが背を向けて帰って行った。


家に帰って、ナルトをベッドに寝かせようと寝室を開けたら、そこは地獄絵図かって聞きたくなるくらい真っ赤だった・・・
ベッドも、床も、壁もナルトの血で埋め尽くされていた。
「な・・・なによコレ」
とにかく窓を開けて換気して、とりあえずシーツを取り替えてナルトを寝かす。
苦しくないようにジャージを脱がせて驚いた。ナルトのからだには無数の刺し傷がある。角度からして自分で刺した傷。急所を外して、ジャージを脱ぐと見えるか見えないかの位置にある傷。・・・気づいてほしかったんだね?
きっと、普通に一緒に生活していればすぐに気づく場所にある。見える位置につける傷は究極の自己主張だ。
「ごめんな・・・」


[ 90/95 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -