カカシ、任務中1

カカシが任務に行ってから10分もしないうちに、ナルトはグスグスという鳴き声をあげつつも、火影の腕から出て、先ほどから状況を見守っているシカクに向かって頭を下げる
「はよごじゃまちゅ。かく〜・・・なぅおはなちちゅぅの」
シカクに言葉を習い出して以来、カカシとの意志疎通が比較的スムーズになったナルトは、今日もシカクに言葉を習う。泣いていたって仕方がない。とばかりに涙でぐちゃぐちゃな目元をカカシに買ってもらった浴衣の袖で拭い、いつもシカクが座るソファに向かって歩き出す。そこに座るのが、ナルトにとっての教室なのである。
教卓も黒板もないけれど、火影の執務室のソファが、ナルトには学校であり教室なのである。

ちょっと遅れてシカクがナルトの横に腰掛け、
「昨日は何をしてたのかな?」
ナルトの授業は日常会話をすることから始まるのである。というか、日常会話にあるわからない単語を教えていくのがシカク流の言葉を教える授業なのである。
「きの〜は、かぁしとおっきちて、お外きらきらだったの。じゃかりゃてくてくしたのよ。でもなぅはかぁしが抱っこしてくれたの。しょんで、ちゅるちゅるして、ぶらんこ乗って、おうちにかえったらかぁしがきぇいきぇいしましょ。っていったかぁ、なぅはかぁしときぇいきぇいに入ったの。ちょんで、ちゃぽちゃぽにピンクのあひぅさんがいたかぁ、ぷかぷかちたの〜!!ちょんで、ぶぉぉぉぉしてもぁっちぇ、ねんねちたにょ!!」
「そうか。ナルトは昨日はカカシと一緒に起きて、外の公園までお散歩したのかぁ。そこで、つるつるは滑り台かな?ブランコにも乗って、おうちに帰ったらお風呂にはいったのか。ピンクのアヒルさんはカカシがかってくれたのかな?よかったなぁ。
で、ドライヤーかけてもらって寝たのかぁ・・・一日カカシと一緒でよかったあぁナルト。」
火影いわく、シカクの天才的頭脳はナルト語すら通訳できるすぐれものらしい。実際にそばで聞いていた火影はナルトの言っていることの半分は理解できなかった。
しかし、カカシに次いでナルト語スペシャリストのシカクの通訳を聞くと、「あぁ」とか納得しつつ、執務に没頭する。


「ナルト。きぇいきぇいはお風呂のことかな?」
「かぁしがきぇいきぇいってゅってんの!!」
シカクが頭を押さえる。言葉の教育を始めてからというもの、カカシが教えることはどうもナルトを可愛くしている。ちゃんとした言葉をあまり教えず、きっとカカシの好みに、純粋天然ちゃんに育てようとしている・・・というか、ナルトのもともとの天然と相まって可愛い・・・ついついこのままでいいか・・・という気にさせる。
「まぁ、大きくなれば言葉は何とかなるであろう。シカクよ。そろそろチャクラの扱い方を教えてはどうじゃ?」
火影も例に及んでそう思ってしまったタチらしい。
シカクは大きなため息をついた。

『ゴーンゴーン』
正午を報せる鐘が鳴り、続々と書類を持ってきていた事務忍が来なくなり、火影が一息入れる
「シカク。ナルト。そろそろご飯にしようかのう?」
「ごはん〜!!」
火影の言葉に先ほどまでシカクと話しながら壁を登ろうと脚にチャクラを集める練習をしていたのであるが、小さなナルトの小さな集中力が「ごはん」という言葉で見事に霧散する。
「こんこんこん!!!!!」
興奮のあまり、言葉が完全に戻ってしまっているが、あきらかにご飯が楽しみであると言っているのはわかるので、シカクはナルトを抱っこして食堂に行く。
その途中で通る受付で、いろんな人々に飴やチョコでおなかがいっぱいにならないように、シカクが防御しているのである。とくに、一応動物のナルトにチョコレートは本来であればダメなのであるが、何分ナルトはチョコが大好きなので、もらったら素早く食べてしまう・・・そしてごはんが入らなくなるので、もらったモノはリュックに詰めるようにしてくれとカカシから言われているのである。
リュックにはさしてモノが入っておらず、緊急用と書かれた巻物以外は大きいものはないのであるが、帰るころにはお菓子でパンパンになってしまう。
「ナルト〜?今日は何をたべたいかなぁ?」
火影がナルトに渡されるお菓子を素早くナルトの手からもらいうけ、シカクがリュックにしまいながら移動の最中に聞けば、いつもと同じ応え
「みちょらーめん!!」
ラーメンが大好きなのであるが、カカシは健康面を考えてあまり食べさせてくれない。しかし、めっぽうナルトに甘い好々爺なジィジは食べさせてくれるので、ナルトはいつもお願いするのである。
そして食堂で注文を済ませると、椅子にまともに座ってご飯が食べられないナルトは椅子に犬のお座りのような体制で座り、どんぶりに顔を突っ込んで食べる。
今までは火影のみであったために怒られることがなかったが、その光景を目撃したシカクが黙っているわけがない。
「火影様!!なんですかこれは!!」
さっそくナルトの向かいで食べていたはずのシカクがナルトの横に移動し、たまたま通りかかった忍に「今すぐ子供用のフォークと器を買ってこい」と、五千両札を渡し、その間にナルトの顔に付いたラーメンを拭い、ラーメンをナルトに食べさせる。
「なぅじぶんでちゃべりゅにょ」
自分で食べると主張するナルトに
「ナルト。ご飯はしっかりと座って食べなさい」
と、ナルトのお座りしている脚を椅子にしっかり座らせ、テーブルにひっかけるように置かれた手をとり、箸を握らせるが、まだまだお子様のナルトには無理である。
「むぃ・・・こんなのちゅかってたべりゃれにゃい!!」
と、ナルトがどんぶりに顔を突っ込みにかかった直後、先ほど頼んだお子様セットが届いた。


「さぁナルト!!これならきっと使えるから。これで食べよう。カカシをびっくりさせてやるんだ!!」
まだまだ単純であり、まだまだお子様なナルトはカカシがよろこぶなんて言われれば頑張るしかない。シカクが小さなどんぶりにラーメンに取り分けたのを目の前に、鼻息も荒く尻尾を振り振り奮闘し出したのである。

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