カカシ、任務へ行く

今日はナルトをお留守番させねばならない・・・
なぜなら任務だから・・・カカシの家にいるナルトのことを知っている火影は決してカカシに長期任務を出さない。むしろ、半日ないしは早朝から夜で終わる任務が多数であった。それは嬉しい。カカシにはその気使いは非常に嬉しいのであるが、その間カカシの代わりにナルトの世話をするのは火影であることが気に食わない。と、いうよりも多忙な火影の執務を滞らせるわけにもいかないため、実際にナルトの面倒を見ているのは手すきの事務方忍の面々であるが・・・これがまたナルトに甘い。というか、自分以外がナルトを甘やかすのが許せないカカシ・・・
それでもどうしてもナルトを一人にするのは心配なカカシは泣く泣く火影にナルトを預ける。一般的には保育園があるのだが、ナルトはどんなにプリティでも『九尾』。里の将来を担う子供たちと一緒にするわけにはいかないのである。


そんなわけで
「ナルト〜。今日は任務だからジイジの所に行くよぉ」
カカシがナルトに声かけると、ナルトは脱兎のごとくにいなくなる。
本人は隠れているつもりで、テレビの裏に入り込むが、幅をとる尻尾や、大きな耳が全く隠れていない。
「ほら!!リュックに入る?抱っこで行く?」
カカシはテレビを動かしてナルトを抱き上げるが、ナルトはイヤイヤしながら逃げようとしている。
「かぁし〜。行くないの!!なうは行くないの!!だからかぁしも行くないの!!」
コンコンコン!!と涙でいっぱいの目を大きく開いて必死の抗議をするナルト。
もう相好崩しまくりで「どちたの〜?わがままはダメだよぉ?」とか、100年の愛すら覚めそうな甘ったるい声を出して、カカシはナルトを抱きしめる。
どうやらカカシに任務に行って欲しくないようなのである。ナルトはナルトなりに、「任務」なるものに行った後のカカシは血のにおいがしたり、けがをしていることが多く、それが危ないことであることを理解していた。
「・・・行っちゃめ・・・かぁしはなぅと一緒よぉ?カミカミすぅのよぉ!!ぃたぁよぉ!!」
ナルトの話しを聞きつつも玄関にゆっくりと歩を進めるカカシにナルトは脅しをかける。要はそれ以上動くと噛むぞ!!的な事を言っているのだが、カカシは意に反さず「噛んだらだめよ?」とか小さくむきだされているナルトの牙を触って、なだめる
「ナルトはどうして行っちゃだめって言うのかな〜?」
「・・・かぁし血ぃでるのなぅはぃたぁの・・・なぅはかぁしの血ぃでてぅにおいわかるの。なぅはぃたぁのよ?」
涙がついにこぼれて、カカシにぶら下げられるように抱きあげられていたナルトは「ひぃん」としっぽを小さく縮こまらせ、耳はペタンと頭にくっついてしまっている。そんなナルトを胸元に抱きよせ、ポンポンと背中を叩いてなだめつつ、「・・・グハッ!!!なに!?俺が怪我するのが嫌なのね!!俺が怪我するとナルトが痛いとか・・・可愛すぎる!!!今なら悶え死ねる・・・」とか不埒な事を考えるオオカミ一匹・・・もとい大人一人。
脳内は「かわいいかわいいかわいい・・・」がエンドレスにこだまし、顔はニヤケきってしまりがない。なにより下半身が若干・・・
ナルト(+己の一部)が落ち着くのを待って、カカシはナルトを床におろした。


「ナルト・・・今日はけがしないよ。今日は危なくない任務だから。ナルトが心配なら、今日ジィジに会ったら、俺に危ない任務させないようにお願いしといて。今日のナルトの任務だよ。」
カカシに任務をもらったナルトは、「わきゃった」となんだか若干嬉しそうにニコニコしつつ、お気に入りのお菓子やぬいぐるみが入ったリュックを背負い、「抱っこ」と言ってカカシの胸元にヨジヨジ登って、カカシに優しく抱っこされて、火影の元へ向かう。



IN受付
今日はナルトが来ることをみんな知っている。なぜならカカシが任務だから。受付のみんなはナルトが好きそうなお菓子をポケットに忍ばせ仕事をこなしていた。
「ナルト〜。付いたよ?みんなにごあいさつは?」
「はよごじゃまちゅ」
抱っこされて登場してきた小さなアイドルに元気にごあいさつを頂いた忍の皆さんは、これから任地に赴く者も、たった今帰還した者も、総出でナルトにあいさつを返す。
「おはよう。俺がここに呼ばれるってことは今日は任務か?」
登場したのは奈良シカク。木の葉の名家である「奈良家」の党首であり、里一番のキレモノとして通っており、度々火影に相談されたりしているらしい・・・
そんなこともあり火影の執務室に良くいるシカクは今やナルトの教育を引き受けてくれている。ここ最近でナルトがよく話せるようになったのはこの男のおかげである。
「おはようございまますシカクさん。そうなんです。夕刻には戻れると思うので、よろしくお願いします。」
ナルトは複雑な顔でシカクを見ている。シカクのことは嫌いではない。むしろ大好きである・・・が、この場所でこの人と会うということがナルトは大嫌いなのである。すなわちカカシとのしばしの別れを意味しているからである。
「かぁちぃぃぃぃぃぃ・・・行くのぉ?」
ぐずりだしたナルトを再度抱っこしつつ火影の部屋へ入る。抱っこしているカカシに代わり、部屋をノックするのはナルトの役目。どんなに嫌でもノックする。
ニコニコと笑顔で招き入れてくれたジィジこと火影は、簡単な挨拶をカカシと交わし腕にいるナルトを引き取る。おとなしく火影の腕に移動したナルトであるが、目には大粒の涙。耳としっぽは垂れっぱなしで、「かぁし〜・・・コンコンコン・・・」と、世にも不幸な鳴き声を上げている。
それでも任務は任務。早く出なければ帰りが遅くなってしまう。と、心配したカカシは
「さて、じゃぁ俺は任務に行きますんで、ナルトをお願いします。」
と、火影に一礼し、涙いっぱいで手を振るナルトに後ろ髪を引かれつつも任務に向かった。


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